年内最後の代表戦となる11月シリーズ。
毎年この時期になると「今年ももうすぐ終わりなんだな」とこの1年を振り返ってみると、感心してしまうほど取り立ててなにもしていないので、妙にしんみりとしてしまう。
積読になっている本の数々、また連絡しますと言って放置プレイになっている(こっちがされている)知人友人たち、絶賛延滞中の借金etc。
こんなことではいけない、年内になにか有意義なことをせねば! と気持ちだけは急くのだが、なにをするべきか逡巡しているうちにまた日々のルーティンに引きずりこまれ、本はほこりをかぶり、連絡は途絶えたまま、遅延損害金だけが加速度を増して師走に向かっていくこの時期。
こちらがそんなだらしない時間を過ごしている間に、我らが日本代表はインドネシア、中国との連戦も無事に勝利を収め、W杯出場のチケットはもう目の前である。
ここまで順風満帆な最終予選というのは近年記憶にないほどで、今年のアタマに行われたアジアカップでの惨敗が十分な糧となっているようで、応援している側としては納得の出来栄えと勝ち点になっている最終予選。
この11月シリーズ、FW小川の連続得点やGK鈴木彩艶のビッグセーブ、MF守田がいつの間にか日本の心臓部になっていることなどトピックはあるが、やはり強い印象に残ったのは、ひさしぶりの途中出場で美しいシュートをキメた菅原のコメントである。
「最終予選が始まってから自分自身悔しい思いをしてきたし、今日だって自分がスタメンに名前がなかったのが悔しかった。そういう気持ちが僕の原動力になっていると思うし、自分に対して苛立ちというか、もちろん他の人に矢印をむけそうなときもありましたけど、やっぱりサッカー選手というのはピッチに立って自分を証明することが日頃の結果に繋がってくると思っていた」
「僕自身もみなさんと一緒で人間なわけで、全部が全部人生うまくいくわけではない。もちろんああでもないこうでもないと言い訳をしたくなることもあるし、誰かに言うわけではないけど思うことはある。
ただそれを言っても僕のサッカー人生が変わるわけでもないし、パフォーマンスが変わるわけでもない。他に向けそうになったとしても自分自身に矢印を向けて、何が必要なのか、もっといい選手になるためにどうするべきなのか常に考えるべきだと思った。そういう難しい時期をどう過ごすかで先が見えてくると思う(以下省略)」
今夏オランダからプレミアリーグに移籍しステップアップを果たし、その能力は日本代表のなかでもスタメン級でありながらこの最終予選ではシステム変更の煽りを受けて出番がまったくなかった菅原。
Team camなどで見る陽気でおどけたキャラの菅原が、これまで自身の苦しく喘いでいた心情をここまで赤裸々に発したコメントには心打たれるものがあった。
そういうメンタルがあるからこそ、10代からオランダで活躍できるのだなと。
ベンチに入れずとも練習から先頭に立ちチームを引っ張っていく長友の姿を見ていたというのもイイ話である。
菅原が中国戦でキメた、あの角度のないところからの鋭いシュートと同じことをやれと言われれば、なかなか難しいと思うが(W杯ドイツ戦での浅野のゴールなんかもそう)スペシャルなゴールほど、そこになにか選手の深いドラマ性が宿されているのかも知れない。
代表に呼ばれても出番がない他の選手たちの気持ちを代弁・体現したような今回の菅原がこの11月シリーズ、いや今年の日本代表でのマンオブザマッチだと個人的にそう思わされるような姿であったのだ。
配信: 幻冬舎Plus