3、横領が起こりやすい部署と手口
「横領しやすい人」と「横領されやすい会社」の2つが重なると、横領が発生しやすくなります。
横領を防ぐためには、横領の具体的な手口を事前に把握しておくことが大切です。ここからは、横領が起こりやすい部署と手口を確認していきましょう。
(1)経理部
経理部はその名のとおりお金の管理をしている部署です。
会社のお金の流れやお金が動きやすい時期、会社のお金の管理に関する弱点等を把握しているので、経理部では他の部署に比べ横領が発生する可能性が高いです。
中には、経営陣でも理解していないようなお金の管理の抜け道やお金を横領してもうやむやにできる時期(例:繁忙期)等についても経理部はしっかり把握していることがありますので注意が必要です。
(2)営業部
経理部以外に横領が発生する可能性がある部署としてあげられるのが営業部です。営業部はどこの会社でもノルマやお客さんからのクレーム処理等に追われ、ストレスやプレッシャーがたまりやすい部署です。
「こんなに営業を頑張っているのになぜこんなに給料が低いんだ?」と、自分の頑張りと給料が見合わないことに不満を抱きやすい部署でもあるでしょう。
そのため、ストレスやプレッシャーから会社で不正な行為に手を出してしまう人がいます。
また、営業は外回りがあったりお客さんに実際に個別で会いに行ったりする等、ある程度裁量がある部署でもあります。
そのため、お客さんから受け取ったお金をそのまま着服したり、お客さんへの贈答品名目で会社のお金を不正に引き出したりすることもあるでしょう。
(3)役員
「まさか会社の役員が横領を起こすなんて…」と経営陣が驚くのが、会社の役員が横領を起こしたときです。会社の役員といえば重大な責任を担っており、会社の経営を共に進めていく幹部であり、本来であれば会社の味方のはずです。
そんな役員は、会社の機密情報や他の社員が知ることのない会社のお金の管理方法を知っていることが多く、だからこそ横領に手を染めやすい一面もあります。
(4)その他の部署
上記以外の部署でも横領が発生する可能性はあります。
部署の垣根を超えて、会社のお金や商品、備品などの所有物に触れる機会がある社員はいるでしょう。たとえば、上司の代わりにお使いをする事務職員などは、上司に代わって会社のお金や商品に直接触れる機会が多くあります。
事務職員だからなどと安心せずに、会社のお金や所有物に触れる機会がある社員については、部署を問わず隙を与えないようにすることが大切です。
4、横領を防止する方法
横領は部署を問わず発生する可能性があります。社員の行動を全て把握することは不可能ですから、横領を防止するには、会社が以下のような対策を講じることが大切です。
(1)お金の管理を1人の社員に丸投げにしない
中小企業では、そもそも社員の数が少なく、お金の管理を1人の社員に任せっきりにしていることが少なくありません。
お金の管理を1人の社員に丸投げしてしまうと、その社員は自分だけがお金の全体像を把握しているという気持ちになり、横領しても誰にも見つからないだろうと考え、不正を起こす動機が発生しやすくなります。
社員の数が少ないとやむを得ないと感じるかもしれませんが、お金の管理については最低でも2人以上の人間が携わるようにしましょう。
1人がお金の流れを管理し、もう1人がダブルチェックをして承認する体制を作る等、お互いに見張りあっているという状態を作るだけでも不正の防止につながります。
(2)定期的に税理士のチェックを受ける
人間は、他人の目が少しでも働いていると感じれば、不正に手を出す気持ちを弱めることができます。
「どうせ誰もお金の細かい流れを把握していないだろう」と考えると、悪気もなく横領に手を出してしまう人がいますが、他人からのチェックが定期的に入っていると考えれば不正の発覚を恐れて横領したい気持ちを抑止できる可能性が高まります。
できれば、月次で税理士のチェック・報告を受ける等、専門家から定期的かつ継続的にチェックを受けるのが理想です。
(3)内部通報の窓口を設置する
横領してる人は「自分の横領は誰にもバレていないはずだ」と思っていても、意外と他の社員は横領の存在に気づいていることは少なくありません。
波風を立てたくなくて見て見ぬふりをしているものの、実は何人もの社員が横領の発生や手口に気づいていることもあります。そのため、社内に内部通報の窓口を設置するのも有効です。
(4)社員たちとコミュニケーションをとる
お金に困って横領をする人もいれば、仕事のストレスや不満が積み重なって、そのはけ口として横領に手を出してしまう人もいます。
社員とコミュニケーションをとることで、社員が困っていることや会社に対する不満をさりげなく話してもらい、横領の危険性を察知できることもあるでしょう。
もしも社員の様子に異変が見られる場合は、社内のカウンセリングを利用させたりお金の管理場所から間接的に遠ざけたりする等、何らかの対策を講じることを検討してください。
配信: LEGAL MALL