5、横領されたときの対処法
横領を防止する対策は大切ですが、どれだけ対策をしていても社員が抜け道を探し出して横領をする可能性は残ります。ここからは、横領されたときの対処法をご紹介します。
(1)証拠を確保する
横領が発覚したら、直ちに証拠を確保するために動きましょう。
その社員が出勤し続けていると、証拠を改ざんしたり破棄したりする可能性があります。
横領の疑いをかけられている社員に対しては直ちに出勤停止を命じて被害の拡大や証拠隠滅を防ぐように動きましょう。
データはすぐに改ざんできるものもありますので、横領が発覚したらスピード勝負で動いていくことが大切です。
今後、刑事告訴や損害賠償請求をしていく際、証拠は必ず必要になります。
横領発覚直後は本人が横領の事実を認めていても、後から本人が主張を覆す可能性がありますので、証拠をしっかり確保するよう努めましょう。
(2)懲戒処分を行う
横領が発覚した場合、当該社員の懲戒処分を検討することになります。通常、就業規則の中に懲戒処分に関する規定が存在しているはずですので、適切な処分を検討していきましょう。
懲戒処分には、懲戒解雇、退職勧奨、降格、出勤停止、減給、戒告等があります。横領の被害の程度や悪質性等、様々な事情を考慮し適切な処分を行いましょう。
横領は刑事事件にもなりうる重大な行為ですので、懲戒解雇が相当と考えられることが多いです。
もっとも、懲戒解雇はその後の就職活動にも影響しうる重大な処分ですので、諭旨解雇や依頼退職などにとどめることも考えられるでしょう。
懲戒処分を行う場合、手続の流れは各会社の就業規則に明記されているはずですので、就業規則に則り手続を進めていきます。懲戒処分は重大な処分ですから、処分を下す前に、本人に説明および弁明の機会を与えるようにしてください。
(3)刑事告訴を検討する
横領が発生した場合、刑事責任を追及するために刑事告訴をすることが可能です。
横領された金額や会社の被害の大きさにもよりますが、たとえば横領された金額が大きな額で本人が賠償することもできない場合やSNS等での拡散により会社の被害が拡大している場合は、刑事告訴も視野に入れていきましょう。
警察に動いてもらうには証拠を保全しておくことが必要ですので、証拠の確保は必ず行ってください。
(4)損害賠償請求をする
刑事告訴はしないものの、民事事件として損害賠償請求をすることを検討している人もいるでしょう。社員がお金を横領した場合、そのお金はもともと会社のものですから、全額賠償してもらうのが筋です。
損害賠償請求をしていく際、社員とまずは話し合い・交渉をしていくことが必要ですが、当事者同士ですと冷静な話し合いができない場合もあります。
その場合は、弁護士に依頼をして間に入ってもらいながら交渉を進めましょう。
交渉が進まない場合は、裁判手続を進めることも視野に入れる必要があります。
また、横領した社員が不起訴を望む場合や少しでも軽い刑罰を望む場合は、損害賠償や和解金の支払いを行う可能性があります。
民事事件と刑事事件は手続としては別ものですが、このように連動する場合がありますので、どのように手続を進めるべきかは弁護士と慎重に相談をしましょう。
6、横領してる人の特徴にピンときたら弁護士に相談を
横領の可能性を少しでも感じている場合は、早めに弁護士に相談をするようにしてください。少しの時間の経過がとんでもない被害を招く場合もありますので、早めの対策が不可欠です。
特に、横領をした社員に証拠隠滅の猶予を与えてしまうと、刑事告訴や損害賠償請求が難しくなる可能性があります。弁護士に相談をすることでスピーディーな対策を講じることができます。
また、横領自体は発生していないものの、横領を防止する対策を講じたい場合も弁護士に相談をするのが賢明です。
横領できる隙を社員に与えてしまうと被害が拡大する可能性がありますので、弁護士と相談しながら横領の防止策を会社に取り入れていきましょう。
配信: LEGAL MALL