5、子ども2人の養育費に関するQ&A
最後に、子ども2人の養育費に関するよくある疑問にお答えします。
(1)親権者が別々になった場合の計算方法は?
子どもが2人いる場合、上の子の親権は父親に、下の子の親権は母親に、というように兄弟の親権がわかれることがあります。
養育費は実際に子どもを育てていくときにかかる費用なので、親権を誰が持っているかではなく、子どもを誰が育てているかという実態を基準に考えます。
そのため、親権が父親と母親でわかれていても、実際には母親が2人の子どもを育てているような場合は養育費算定表を基準に養育費を考えます。
他方、実際に父親と母親がそれぞれ別々に子どもを育てている場合は養育費算定表どおりに計算することができません。この場合は、養育費算定表の考え方の基礎となっている「生活費指数」を用いて養育費を計算します。生活費指数は、成人:100、15~19歳の子供:85、0〜14歳の子供:62となっています。
計算方法については様々な考え方がありますが、たとえば養育費算定表によれば養育費の金額が10〜12万円となっている場合(今回は10万円として計算します)で、父親が17歳の子供(生活費指数:85)、母親が12歳の子供(生活費指数:62)を育てているとします。この場合、10万円÷(85+62)×62=42,176円を父親が母親に養育費として支払うこととなります。
(2)養育費はいつまでもらえる?
養育費は子どもが自立するまでに必要なお金ですので、一般的には、子どもが20歳になるまで支払うべきであると考えることが多いです。
民法改正により成人年齢は18歳になりましたが、裁判所は養育費については基本的に20歳まで支払義務があると考えています。
もっとも、養育費をいつまで支払うかについては決まりがあるわけではないので、たとえば大学卒業まで養育費を支払ってもらいたい等の事情がある場合は、事前に取り決めて公正証書を作成しておきましょう。
(3)学費は養育費とは別に請求できる?
一般的に、学費は養育費に含まれると考えられています。そのため、子どもが公立の学校に通う場合に養育費とは別に学費を請求することはできないのが原則です。
もっとも、養育費算定表の金額は子どもが公立の学校に通う場合を想定しています。そのため、子どもが私立の中学や高校に通う場合で公立に比べ学費が多くかかることが想定される場合、事前に公正証書等の協議内容にその旨含めておく必要があるでしょう。
(4)養育費の金額は変更できる?
養育費は一般には20歳まで支払うものとされていますが、子どもが20歳になるまでの間に両親ともに生活状況が変わることは十分考えられます。また、当初想定していなかった費用が子どもに必要となる場合もあるでしょう。
このような場合、相手方の合意が得られれば養育費の金額増減が可能です。相手方の合意が得られない場合は、家庭裁判所に養育費の金額に関する変更申立てをする必要があります。
(5)養育費の支払いが止まったらどうすればいい?
養育費の支払いが止まった場合、まずは任意での話し合いをして相手と交渉することが第一です。相手方が交渉に応じない場合、公正証書がある場合や調停または審判で養育費を取り決めた場合には、強制執行の手続きをとることも可能です。
養育費の支払いに関する強制執行を個人でやることは難易度が高いので、強制執行に進む場合は弁護士に依頼することをおすすめします。
なお、養育費を当事者間の話し合いで取り決めた場合で、公正証書がない場合には、家庭裁判所に養育費請求の調停または審判を申し立てる必要があります。
6、養育についてお困りのときは弁護士に相談を
養育費は子どもの人生を左右する大切なお金です。母親のみで子ども2人を育てていくのは経済的に相当困難ですので、養育費についてお困りのときはまずは一度弁護士にご相談ください。
配信: LEGAL MALL