現住建造物等放火罪とは?放火は極めて重い刑罰!逮捕されたらどうなる?

現住建造物等放火罪とは?放火は極めて重い刑罰!逮捕されたらどうなる?

現住建造物等放火罪は、数多くある犯罪の中でもかなり重い刑罰が科せられる重大な犯罪です。 現住建造物等放火罪は未遂でも処罰されます(刑法第112条1項)。

ちょっとしたいたずらの気持ちや軽い気持ちで放火したとしても、火は広い範囲に延焼しやすく、人の命を奪う可能性すらあります。

この記事では、

現住建造物等放火罪の構成要件と刑罰
現住建造物等放火罪で刑罰を軽くするための対処法

について解説します。

1、現住建造物等放火罪とは?

現住建造物等放火罪でご自身やご家族が逮捕されたり逮捕されそうになったりしている場合、落ち着いて今後の方針を考えていく必要があります。

家族から放火したことを明かされたり放火に関する電話がかかってきたりしたときは、罪を隠そうとすると後々不利に働く可能性があります。

今後の方針を考えていくために、現住建造物等放火罪の具体的内容をみていきましょう。

(1)構成要件 

現住建造物等放火罪(刑法第108条)が成立するには、以下の構成要件を全て満たす必要があります。

①人が住居に使用している、または人がいる建物等への放火

現住建造物等放火罪は、人が実際に住居として使用しているか、もしくは人が実際にいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑へ放火した際に成立します。

放火当時に人がいなくても、日常的に住居として使用しているのであれば、本要件を満たします。

②放火行為

放火行為とは、目的物を焼損させる危険性を有する行為のことをいいます。

家を焼損させる目的で家に放火するような直接的な放火行為だけでなく、家を焼損させるために家の隣の物置等の媒介物に火を付けるような場合も「放火」となります。

③焼損させる

「焼損」とは、火が媒介物を離れ、その火が独立して燃焼を継続できる状態に達することをいいます。

一般的には、火が激しく燃え盛り消防車による消火活動が行われているような場面が放火罪の成立場面であるとイメージするかもしれません。

しかしながら、テレビニュースで取り上げられる被害は大規模な場合が多く、大規模に燃え盛っていないと放火罪が成立しないわけではないのです。

燃えている範囲はごくわずかであっても焼損したといえるケースはありますので、放火罪を軽く考えないようにしましょう。

④故意

本罪が成立するには故意が必要です。平たく言うと、故意がある場合とは「わざと」放火行為をして目的物を焼損させた場合です。

これに対し、「わざと」ではなく「不注意で」目的物が焼損してしまった場合は放火罪ではなく失火罪(刑法第116条)による処罰対象となります。

ライターやマッチの処理がしっかりできておらず不注意で目的物に火が燃え移ってしまうことは日常的にありうるでしょう。

わざと焼損させた場合と不注意で焼損させた場合を同じように処罰するのは均衡に欠けますので、不注意の場合は失火罪の処罰対象となります。

(2)刑罰

現住建造物等放火罪の法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です(刑法第108条)。

死刑の可能性すらある重い刑罰に驚くかもしれませんが、放火行為はたくさんの人の命を奪う可能性がある危険な行為ですので、このような重い刑罰が定められています。

火を放つこと自体は、いたずらの延長線上や軽い気持ちでやってしまう人がいるかもしれませんが、被害の大きさを考えると決して安易な気持ちでやって良い行為ではありません。

(3)その他の放火罪について

現住建造物等放火罪以外の放火罪として、非現住建造物等放火罪と建造物等以外放火罪があります。

非現住建造物等放火罪は、誰も住居として使用しておらず、かつ放火当時に誰も人がいない建造物、艦船又は鉱坑を焼損した場合に成立します。

非現住建造物等放火罪の法定刑は、2年以上の懲役です(刑法第109条1項)。

建造物等以外放火罪は、放火して、108条と109条に定められた物以外の物を焼損し、よって公共の危険を生じさせた場合に成立します。法定刑は1年以上10年以下の懲役となっています(刑法第110条1項)。

2、現住建造物等放火罪は刑罰が極めて重い!

上記のように、その他の放火罪と現住建造物等放火罪は刑罰の重さが大きく異なります。

火を放つという行為自体は同じでも、どこに火を放つか、そのとき人がそこにいるのかによって科せられる刑罰に大きな違いが生じます。

ここからは「現住建造物等」の具体的内容を確認していきましょう。

(1)「現住建造物等」の「現住」の意味

本罪の放火行為の対象は、人が住居として使用しているか、または、実際に人がいる建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑です。

「現に人が住居に使用」とは、起臥寝食する場所として放火行為をした者以外の者が日常利用していることをいいます。

日常利用していればこの要件に該当しますので、常に人がいる必要はありません。

一日のうちの特定の時間のみ使用している場所や、一年のうちの一定期間のみ住居に使用されている場合も同要件に該当します。

たとえば、夏の間しか住居として使われていない別荘や、スキーのシーズンのみ住居代わりに使われる建物等も同要件に該当します。

これに対し、空き家となっており一切人の居住や出入りがない場合は「現に人が住居に使用」とはいえません。

(2)「現住建造物等」の「建造物等」の意味

「建造物等」とは、建造物、汽車、電車、艦船、鉱坑のことをいいます。

「建造物」とは、家屋その他これに類似する建造物のことをいいます。屋根があり、壁・柱によって支えられ、土地に定着し、人が出入りできることが必要です。

(3)人が住んでいないと思って放火した場合はどうなる?

本罪の対象となるものに放火したものの、放火した本人は人が住んでいないと思っていた場合、本罪は成立するのでしょうか?人が住んでいるとは到底思えない荒れ果てた家屋に火を放ったものの実は人が住んでいたケース等で何罪が成立するかが問題となります。

このケースのように、客観面に着目すれば成立するはずの犯罪(客観)と本人の認識を前提にすると成立する犯罪(主観)の間でずれが生じている場合は、客観と主観が重なり合う範囲で犯罪が成立します(抽象的事実の錯誤)。

客観的に見れば現住建造物等放火罪に該当する場合でも本人の主観が非現住建造物等放火罪であった場合、双方が重なる範囲、すなわち非現住建造物等放火罪の範囲で犯罪が成立することとなります。

もっとも、簡単にこのような処理がなされると、軽い罪の故意を主張したもの勝ちになってしまいますので、実際は故意については厳しく追及されます。

故意には「未必の故意」が含まれることにも注意が必要です。

未必の故意とは、簡単にいうと「犯罪行為による結果が確実に発生するとは思っていないものの、その可能性があることは認識しており、結果が発生しても構わない」といった心理状態のことをいいます。

現住建造物等放火罪のケースでいえば、放火する建造物に人は住んでいないと思ってはいても、「もしかすると住んでいるかもしれない」ということが分かる状況であれば、故意が認められる可能性があります。

逮捕された場合には、「人が住んでいるとは思わなかった」と言い訳しても、取調官からこの点を厳しく追及され、現住建造物等放火罪の故意ありとして起訴される可能性が十分にあります。

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