覚醒剤取締法とは?不起訴や執行猶予を獲得するためにやるべきこと

覚醒剤取締法とは?不起訴や執行猶予を獲得するためにやるべきこと

3、覚醒剤取締法違反で不起訴や執行猶予を獲得する方法

覚醒剤取締法違反で逮捕された場合、他の犯罪と同じように検察庁に身柄を移送され(「送検」と言います)、検察官が起訴、不起訴の判断をします。

以上でご説明してきたように、覚醒剤取締法違反の罪は他の犯罪よりも法定刑が比較的重く、実際に起訴される可能性が高く、刑事裁判でも厳しい刑罰が言い渡される事案が多い傾向にあります。

とはいえ、事案によっては不起訴や執行猶予付き判決を獲得することは可能です。そこで、万が一、覚醒剤取締法違反の罪で逮捕されたときに、不起訴や執行猶予付き判決を獲得する方法についてご説明します。

(1)真摯に反省する

まずは、取り調べで真摯な反省を示すことです。

その際、単に「反省しています」と述べるだけでなく、覚醒剤に手を出した原因を真剣に追求した上で、どうすれば二度と手を出さずに済むのかについても具体的に考えて説明することが重要です。

自己の犯罪行為に対して反省の念を示すことは、検察官が処分を決定する際、裁判官が判決を下す際に有利な事情として考慮される場合があります。

(2)入手経路を正直に話す

次に、覚醒剤を入手した経路も正直に話すことが、処分や量刑を判断するうえで有利な事情として考慮される場合があります。

なぜなら、警察や検察といった捜査機関は、覚醒剤を違法に売りさばいている「大元」の特定・逮捕を目指しているからです。

覚醒剤の入手経路に大きな関心をもっている捜査機関に対して正直に話すことは、捜査に多大な協力をすることになります。

ただ、覚醒剤を入手する際に売人等から口止めをされて、捜査機関に入手経路を話すと報復を受ける心配があるケースが多いのも事実です。捜査機関もそのことは知っているので、勇気を持って入手経路を話すことは、反省と「二度と覚醒剤に手を出さない」という決意を示すことにもなります。

そのため、入手経路を正直に話すことが、検察官が処分を決定する際、あるいは裁判所が判決を下す際に有利な事情として考慮される場合があるのです。

(3)再犯防止のために家族に監視してもらう

再犯しないための対策として、同居する家族等に日常生活を監視することを誓約してもらうことも有効です。覚醒剤は依存性が強く、実際にも前記「2(2)」でご説明したように、覚醒剤取締法違反の事案では再犯率が高い傾向にあります。

そこで、再犯を防止するためにこそ、覚醒剤取締法違反では厳しく処罰される事案が多いといえます。ただ、一度、覚醒剤に依存してしまうと、自分でやめようと思ってもなかなか難しいという現実もあります。

そのため、同居の家族等に監視してもらう生活環境を整えることができれば、再犯防止対策が整っているとして、検察官が処分を決定する際、あるいは裁判所が判決を下す際に有利な事情として考慮される場合があります。

(4)薬物関係の仲間と関係を断つ

再犯を防止するための対策として、薬物を通じた仲間との縁を切るということも重要です。覚醒剤の売人とはもちろん、一緒に覚醒剤を使用していた仲間がいる場合は、そうした仲間との縁も絶ちきることです。

薬物依存症になると、強烈な快感と覚醒効果が脳に記憶されるため、自分では「やめたい」と思っていても、覚醒剤を目の前に置かれると「使用したい」という強力な欲求に駆られるといわれています。

そのため、薬物関係の仲間との関係が続いていると、ふとした瞬間に覚醒剤を使用したい欲求に駆られ、再犯に至る可能性が高いのです。したがって、薬物関係との関係を断つことも再犯の可能性を下げることになり、検察官の処分決定、裁判所の判決の際に有利な事情として考慮される場合があるのです。

(5)専門的な治療を受ける

薬物依存症は「病気」の一種とされているので、覚醒剤を本気で断ちたい場合には、専門的な治療を受けるべきでしょう。

送検された後、身柄を拘束されていない場合は早速、治療を開始しましょう。身柄を拘束されている場合は、治療を受け付けている医療機関を家族や弁護士等に探してもらい、身柄が解放された後はそこへの通院を誓約することです。

そうすることで覚醒剤を断ち切る決意を示すことにもなり、処分を決定する際や判決の際に有利な事情として考慮される可能性があります。最近では依存症専門の医療機関や、街中のクリニックでも「薬物依存症外来」を受け付けているところが増えていますので、通院可能なところが見つかるでしょう。

(6)自助グループに参加する

薬物依存症から立ち直るためには、自助グループに参加することも有効です。

自助グループとは、同じ問題を抱える人たちが交流し、お互いに励まし合い、援助し合って一緒に依存症という「病気」からの回復を目指す集団のことです。具体的な自助グループとしては「日本ダルク」や「ナルコティクス アノニマス日本」が有名ですが、他にもさまざまな団体があるようです。

通院先の医師や弁護士等に相談すれば、参加しやすい団体を紹介してもらえるでしょう。

(7)否認する場合の注意点

覚醒剤取締法違反で逮捕されても、犯行を否認したい場合もあるでしょう。

例えば、覚醒剤を所持していた場合でも他人から中身を知らされずに預かっていた場合や、自分で使用した場合でも覚醒剤だとは知らなかった、というような場合です。このような場合には、覚醒剤取締法違反の故意がないため、無罪となります。しかし、取り調べで「知りませんでした」と供述したとしても、直ちに覚醒剤取締法違反の故意がないと判断されるとは限りません。

覚醒剤だと知らなかった場合でも、何らかの違法な薬物かもしれないと思っていた場合は覚醒剤取締法違反の故意が認められてしまいます。本当に違法な薬物だという認識もなかった場合は、取り調べの対応が非常に重要となります。

いったん罪を認めて、自白内容が記載された供述調書が作成されてしまうと、その後否認したとしても、いったん自白した内容を後々裁判で争うことは大変困難です。そのため、無罪を目指す場合は取り調べの当初から適切に対応することが必要です。

そのためには、早めに弁護士を呼んで相談し、取り調べの対応方法についてアドバイスを受けることが大切です。

4、覚醒剤取締法は最近改正された~その内容とは?

覚醒剤取締法は最近改正されましたので、改正内容が気になる方もいらっしゃることでしょう。

大きな改正点は、法律の名称が旧来の「覚せい剤取締法」から「覚醒剤取締法」に変わったことです。個別の条文でも、「覚せい剤」という表記から「覚醒剤」に改められています。

この改正は「醒」という漢字が常用漢字に加えられたことによるもので、令和2年4月1日から改正後の「覚醒剤取締法」が施行されています。

他にも、医師や研究者、製造業者等の覚醒剤原料の取り扱いや保管に関する事項などが改正されていますが、一般の方に関わる事項については特に変更されていません。

一般の方にとって、法改正によって刑罰が厳しくなったわけではありませんが、従前どおりの厳しい法律であるといえます。

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