養育費の不払いを回収する!請求方法と予防法を解説

養育費の不払いを回収する!請求方法と予防法を解説

離婚後の養育費について元パートナーとの間できちんと取り決めたとしても、不払い(未払い)となるケースは少なくありません。

相手が働いていない上に全くお金を持っていない等の場合なら仕方がありませんが、そうでなければ、給料や預貯金を差し押さえることにより、早く確実に養育費を回収することを目指しましょう。

今回は、

養育費が不払いになったときの対処法
養育費の不払いを予防する方法
養育費の不払いに関して気になる法改正の内容

などについて、弁護士が解説していきます。

1、離婚後に養育費をもらっている人の割合

離婚して未成年の子どもを引き取った場合、元パートナーに対して養育費を請求することができます(民法第766条1項、第877条1項)。

養育費をもらうことは法律上の正当な権利なのですが、実際には離婚後にきちんと養育費をもらっている人の割合はあまり高くないようです。

厚生労働省が令和3年に行った調査によると、母子世帯(シングルマザー)のうち、元パートナーと養育費の取り決めをしている人の割合は46.7%に過ぎません。

半数以上の人は取り決めすらしていないことになります。

実際に養育費をもらっているかどうかについては、以下の調査結果となっています。

現在も養育費を受けている
養育費を受けたことがある
養育費を受けたことがない
不詳
総数

令和3年
303,252人

(28.1%)
153,444人

(14.2%)
613,567人

(56.9%)
8,950人

(0.8%)
1,079,213人

(100.0%)

参考:厚生労働省|令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」

養育費をもらえないと、親の生活はともかくとして、子どもの生活や教育に支障が出るおそれがあります。

それは何としても避けたいところでしょう。

2、養育費が不払いとなったときの対処法(債務名義がある場合)

元パートナーが養育費を支払わないときの対処法は、あなたが「債務名義」を取得しているかどうかによって異なります。

債務名義とは、強制的に債権を回収できる法的効力のある書面のことです。

具体的には、以下の書面が債務名義に該当します。

当事者間で養育費を取り決めた場合の公正証書(強制執行認諾文言付きのもの)
調停で養育費を取り決めた場合の調停調書
審判で養育費が定められた場合の審判書
離婚訴訟で養育費が定められた場合の判決書または和解調書

まずは、上記のうちいずれかの債務名義をお持ちの場合の対処法について解説していきます。

(1)直接連絡して催促する

養育費の不払いが生じたとしても、単に元パートナーが払い忘れているだけということもあり得ます。

そこで、まずは、相手の支払う気持ちを確かめるためにも、以下の方法で連絡をとってみて、支払いの催促をしましょう。

メール(パソコンでも携帯でも可、LINEやFacebookでもよいでしょう)
電話
手紙

このとき、「○○日までに支払ってください」というように期限を区切って伝えた方が、払ってもらえる可能性が高まります。

(2)内容証明郵便を送付する

もし、メール・電話・手紙で催促しても支払いがない場合、内容証明郵便で請求書を送付することが有効な場合があります。

①内容証明郵便とは?

いつ(郵便発送の日付)
だれがだれに対して
どのような内容の手紙を送ったか

について、郵便局が証明してくれる手紙です。

法律上の効力は一般的な手紙と変わりませんが、書留郵便で配達され、文末には郵便局長が内容証明郵便として差し出されたものであることを証明する記載が入っています。

そのため、受け取った側はかなりのインパクトがあります。

このインパクトの強さゆえ、相手に対して、心理的プレッシャーを与えることができます。

実際、通常の郵便で請求しても支払いをしてこなかったのに、内容証明郵便で請求したらすぐに支払ってくるケースはよくあるのです。

ちなみに、弁護士などが代理人として内容証明郵便の差出人になっているような場合には、さらに不払い(未払い)を継続する場合は何か法的な手段をとるというプレッシャーも与えることができます。

弁護士名で法的措置を予告することで、それまで全く誠意の無かった相手方が支払いをしてきたり、こちら側の言い分を認めてきたりするケースもよくみられます。

弁護士名で内容証明郵便を送りたい場合は、まずは無料相談を実施している法律事務所へ問い合わせてみましょう。

②内容証明郵便の作り方

まず、一定の字数の同じ文章を、3通用意する必要があります。

用紙は文房具店でも売っていますが、字数を守れば自分で手書きやワープロで作成し、2部コピーをとってもかまいません。

字数は、用紙1枚につき520字以内で、

縦書きの場合 : 1行20字・1枚26行

横書きの場合 : 1行26字・1枚20行

で作成します。

1字でも過不足があれば、郵便局で受け付けてもらえません。

用紙が2枚以上になる場合は、ホッチキス等でとめ、差出人の印鑑(認印で可)で各ページに割り印(契印)を押します。

③内容証明郵便の費用

料金は、

通常郵便料金:84円(25gまで)
内容証明料金:440円(1枚増すごとに260円加算)
書留料金:420円
配達証明料金:320円

となります。

(3)家庭裁判所に履行勧告・履行命令を求める

家庭裁判所で養育費を取り決めた場合は、不払いとなったときに履行勧告・履行命令の発出を求めることができます。

債務名義がある場合でも、公正証書のみの場合はこの制度は利用できませんので、ご注意ください。公正証書しかない場合は、このステップは飛ばして(4)の強制執行を行いましょう。

①履行勧告

調停や審判で決まったことが守られない場合に、その調停をした家庭裁判所に申し立てることにより、家庭裁判所が電話や郵便等で「決まったことを守りなさい」と勧告してくれる制度。裁判所からの連絡となるので、内容証明郵便よりも心理的プレッシャーが強く支払ってもらえる可能性が高いといえます。

履行勧告を出してもらっても元パートナーが支払いに応じない場合は、履行命令を出してもらうこともできます。

②履行命令

一定の期限を定めて、義務を実行するように命令してもらう方法。正当な理由無く履行命令に従わない場合は10万円以下の過料が処せられるので、履行勧告よりもさらに強い心理的プレッシャーを相手に与えることができる。

ただし、履行勧告にも履行命令にも法的強制力はないので、確実に養育費を回収できるとまではいえません。

履行勧告・履行命令の発出を求める方法は、詳しくは各家庭裁判所に確認する必要がありますが、家庭裁判所に行って申し出れば受け付けてもらえますし、電話のみでも受け付けてもらえるところもあります。

(4)強制執行を申し立てる

家庭裁判所による履行勧告・履行命令にもよっても不払いが続く場合には、相手方の財産を差し押さえる「強制執行」という方法をとります。

強制執行を申し立てる前に、以下の準備をしておく必要があります。

お手元の「債務名義」に基づいて、早めに裁判所で手続をしておきましょう。

債務名義の送達申請
債務名義の執行分付与申請
債務名義の送達証明申請

上記の準備を進めるとともに、元パートナーの財産のうち何を差し押さえるのかを到底しましょう。

多くの場合は、以下のものを差し押さえるのが効果的です。

勤務先の給料
預金がある銀行口座

特に、給料の差押えは元パートナーの勤務する会社に通知されることになります。

そのため、支払いがない時点で給料を差し押さえる旨の通知をすれば、会社に知られたくない元パートナーなら任意に支払いに応じることも期待できます。

強制執行を申し立てるには、以下の書類が必要となります。

差押えのタイミングを逃がさないように、効率よく準備を進めていきましょう。

債務名義
差し押さえの対象となる財産の情報
強制執行の申立書
申立書の目録部分の写し、宛名付封筒
資格証明書(給与差し押さえの場合は相手の勤務先会社、預金口座差押えの場合は金融機関の登記簿謄本)
請求債権目録
差押債権目録
当事者目録

強制執行手続きについてより詳しくは、こちらの記事をご参照ください。

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