養育費の不払いを回収する!請求方法と予防法を解説

養育費の不払いを回収する!請求方法と予防法を解説

3、養育費が不払いとなったときの対処法(債務名義がない場合)

次に、養育費についての債務名義がない場合、つまり以下のようなケースにおける対処法を解説します。

養育費の取り決めをしていない
口約束でのみ養育費を取り決めた
養育費を取り決めた離婚協議書や合意書があるが公正証書にしていない

これらの場合も、元パートナーに直接連絡して催促することで養育費を払ってもらえればよいのですが、今後のことも考えて、以下の方法で債務名義を取得しておくべきです。

(1)改めて話し合い、公正証書を作成する

まず、元パートナーと直接話し合うことが可能であれば、改めて養育費について話し合い、取り決めた内容を公正証書にしておきましょう。

書面を公正証書にするには、公証役場にいきます。

公正証書を作成しておくことで、今後不払いが発生した場合には強制執行を申し立てることが可能になります。

(2)調停または審判を申し立てる

直接の話し合いでは合意が難しい場合や、話し合いができない場合には、家庭裁判所へ「養育費請求調停」を申し立てることになります。

調停では、家庭裁判所の調停委員が助言を交えて話し合いを仲介してくれるので、建設的な交渉が可能になります。

調停委員がこちらの言い分を理解してくれた場合には、元パートナーを説得してくれることもありますので、有利な内容で調停が成立することも期待できます。

調停で話し合いがまとまらず、「調停不成立」となった場合には、審判に移行して家庭裁判所が養育費の内容を決定します。

なお、最初から審判を申し立てることもできますが、ほとんどの場合は家庭裁判所が「まずは話し合いましょう」と判断し、職権で調停に付されます。そのため、通常は調停を申し立てます。

(3)裁判をする

養育費を請求するなら、調停・審判の他に以下の裁判手続きをとることも可能です。

①支払督促

債権債務が確認できる書面がある場合に、訴訟をせずとも簡易裁判所が「仮執行宣言付支払督促」を発出し、相手方に支払いを命じる手続きのこと

養育費について取り決めた離婚協議書や合意書などの書面(公正証書化していないもの)がある場合には、この支払督促を申し立てることも可能です。

支払督促が元パートナーに送達されてから2週間以内に異議申し立てがなければ、債権債務が確定し、迅速に債務名義が得られます。

この債務名義を得た後も元パートナーから支払いがなければ、強制執行に移りましょう。

元パートナーが離婚協議書や合意書を作成する際に錯誤があったなどの理由で書面の無効などを主張している場合には、民事訴訟を提起することもできます。

請求額が60万円以下の場合は、「少額訴訟」という簡易な訴訟手続きも利用できます。

訴訟で勝訴し、確定判決を得られれば、これが債務名義となりますから、それをもって強制執行へ移りましょう。

4、養育費は過去の分も遡って請求できる?

養育費が不払いとなった場合、通常は少なくとも数か月分は滞納分が溜まっていることでしょう。ケースによっては、数年分の滞納が溜まっていることもあります。

このような過去の滞納分も遡って請求できるのでしょうか。

(1)取り決めがあれば請求できる

結論からいいますと、元パートナーとの間で養育費についての取り決めがある場合は、過去の分も請求できます。

この場合、債務名義はなくても構いません。

公正証書化していない離婚協議書や合意書しかない場合でも問題はありません。

口約束のみでも法律上は請求可能ですが、元パートナーが口約束を否定した場合に証明することが難しいという問題があります。

一方で、養育費について何も取り決めをしていなかった場合は、一般的に過去の養育費の請求は認められません。

なぜなら、養育費はあくまでも現在の子ども生活や教育に必要なお金を指すものだからです。

養育費の取り決めをしていなかったということは、養育費をもらわなくても生活や教育ができていたものと判断されますので、過去の分の請求は認められないのです。

(2)養育費には時効があるので要注意

過去の養育費を請求できる場合でも、不払いを一定期間放置していると時効で消滅している可能性があるので注意が必要です。

養育費の請求権の時効期間は、以下のとおりです。

調停・審判・裁判で定めた場合:支払期日から10年(民法第169条1項)
当事者間の協議で定めた場合:支払期日から5年(民法第166条1項1号)

この時効期間が経過してしまっている場合でも、元パートナーが時効を援用するまでは、養育費の請求権が消滅するわけではありません。

援用とは、時効による債務消滅効果を受ける旨の意思表示をすることをいいます。

相手が時効のことを知らない可能性もあるので、請求をしてみて、相手が実際に支払うか支払い義務を承認した場合には、時効はなかったことになります。その後、改めて上記の時効期間がスタートします。

なお、時効期間の満了が間近に迫っている場合には、内容証明郵便で請求することによって6ヶ月だけ時効の完成を一時猶予することができます。

その間に調停・審判や裁判などの準備を進めましょう。

実際に調停・審判や裁判を起こせば、その時点で時効期間の進行はストップし、ゼロに戻ります。

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