5、強制執行は利用しやすくなっている
強制執行を申し立てれば、支払いを拒む元パートナーから強制的に財産を取り上げ、そこから養育費を回収することができます。
ただし、どの財産を差し押さえるのかについては、請求する側で特定しなければなりません。
以前は元パートナーが転職したり、メインバンクを変更するなどして財産隠しのようなことをした場合には、事実上、強制執行を申し立てることができない状況でした。
しかし、2020年4月1日から施行されている改正民事執行法によって財産の調査が容易になったので、強制執行の制度が利用しやすくなっています。
「第三者からの情報取得手続」という制度が導入されたことにより、裁判所を通じて市区町村や金融機関、日本年金機構などの関係機関から情報を求めることが可能になったため、元パートナーの勤務先や銀行口座を把握することが容易になりました。
強制執行に関する民事執行法の改正について詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
6、養育費の不払いを予防する5つの方法
ここまでは、養育費の不払いが発生した場合の対処法を中心に解説してきましたが、養育費は滞りなく払ってもらうに越したことはありません。
そこで、ここでは養育費の不払いを予防する方法を5つご紹介します。
(1)取り決めを公正証書にしておく
当事者間の話し合いで養育費を取り決めた場合は、その内容を執行認諾文言付きの公正証書にしておきましょう。
債務名義を取得する手段として公正証書の作成をおすすめしましたが、取り決めた時点で公正証書を作成することは不払いの予防にも役立ちます。
なぜなら、公正証書という格式のある書面を作成することで相手の覚悟も定まるはずですし、「払わなければ財産を差し押さえられる」という危機感を持たせることもできるからです。
(2)調停または審判で取り決める
調停・審判で養育費を取り決めた場合も債務名義が手に入りますので、元パートナーに覚悟と危機感を持たせることができ、養育費の不払い予防につながります。
(3)将来の養育費も差し押さえておく
一度養育費の不払いが発生して強制執行をする場合は、将来の養育費も差し押さえておくことで今後の不払いを予防することができます。
現在の法律では、現時点で支払われていない養育費に加えて、将来の養育費分についてもまとめて差し押さえの申し立てをすることが認められています。
つまり、不払いが発生した都度に強制執行を申し立てなくても、1回の手続きで将来の養育費の確保も図れるのです。
ただし、将来分の養育費については、法律で、その養育費の支払期限後に支払われる給料からしか、取り立てることができないと定められています。
すなわち、将来分もまとめて一度に回収できるわけではない点には注意が必要です。
(4)面会交流に適度に応じる
離婚後に子どもと離れて暮らす親(元パートナー)には、定期的に子どもと会って親子の交流を図る権利(面会交流権)が認められています。
離婚後は子どもを元パートナーに会わせたくないと考える人も多いですが、養育費の不払いを予防するには、適度に面会交流に応じるのが得策といえます。
なぜなら、定期的に子どもと触れ合って親子の絆を再確認することで、元パートナーが養育費を支払っていくモチベーションも上がることが期待できるからです。
子どもと会えないのにお金だけは支払わされるという状況では、どうしてもモチベーションは低下しがちになってしまいます。
面会交流は子どもの成長にとっても大切なことですから、元パートナーが子どもを虐待するような場合は別として、そうでなければ適度に面会交流を認めることをおすすめします。
(5)養育費保証サービスを契約しておく
最近は、養育費が不払いとなった場合に立て替え払いをしてくれる「養育費保証サービス」を提供する民間の業者が増えています。
一定の保証料はかかりますが、養育費を確保するには養育費保証サービスの利用も検討してみるとよいでしょう。
なお、養育費保証サービスを契約するには、業者と養育費をもらう側(あなた)との利用契約だけではなく、業者と支払う側(元パートナー)との保証契約も必要となります。
離婚後、長期間が経過すると元パートナーの協力が得られなくなる可能性がありますので、気になる方は早めに元パートナーに提案した上で契約しておいた方がよいでしょう。
配信: LEGAL MALL