監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
銀杏中毒の概要
銀杏中毒は、銀杏を過剰に摂取することで引き起こされる食中毒の一種です。
銀杏に含まれる「4′-Oメチルピリドキシン」という有毒物質が原因となり、けいれん発作や嘔吐などの症状が出現します。
4′-OメチルピリドキシンはビタミンB6と構造が似ていることから、体内でビタミンB6のはたらきを阻害し、体の神経系に影響を与えます。
熱に強いため、銀杏を焼いたり煮たりしても毒性は完全になくなりません。
銀杏中毒の症状は、銀杏を摂取してから数時間後に症状が現れることが多いです。
リスクは年齢によって異なりますが、大人よりも子どものほうが少ない摂取量で中毒を起こす可能性が高いです。
大人の場合は大量の銀杏を食べなければ中毒になりにくいですが、偏食や飲酒などで体内のビタミンB6が欠乏している場合に起こりやすくなることがあります。
中毒を引き起こす銀杏の明確な量は報告されていませんが、5歳未満の子どもでは6〜7個、大人では50個ほど食べて中毒症状を起こす例もあるため、日々の食事で銀杏を食べるときは量に気をつける必要があります。
(出典:公益社団法人日本中毒情報センター「ギンナンの食べ過ぎに注意しましょう!」)
銀杏中毒の症状が見られた場合は、すぐに医療機関へ受診することが大切です。
治療は主にビタミンB6製剤を投与します。
ビタミンB6製剤を投与することで、症状を和らげるだけでなく、症状が再び現れるのを防ぐ効果もあると言われています。
特に重篤な症状の場合は、放っておくと命に関わる可能性もあるため、迅速な対応が求められます。
銀杏中毒の原因
銀杏中毒の原因は、銀杏の過剰摂取によって、4′-Oメチルピリドキシンが体内で増え、ビタミンB6 のはたらきが抑えられることです。
通常、ビタミンB6は神経伝達物質の一つであるGABA(γ-アミノ酪酸)を合成するためにはたらきます。
GABAは抑制性の神経伝達物質として、神経の興奮を抑える役割を果たします。
しかし、4′-Oメチルピリドキシンの増加によりビタミンB6のはたらきが抑制されると、GABAの合成が減少し、神経の興奮が抑えられなくなります。
体内で神経の興奮が異常に生じる結果、けいれん発作や嘔吐などの症状が現れます。
配信: Medical DOC