2、離婚後に養育費請求できない場合
(1)離婚後の養育費請求は“算定開始時期”が重要
離婚前に、養育費の取り決めをしておらず、離婚後に養育費を請求する場合、原則として過去に遡って養育費の請求をすることはできません。
養育費の請求は、遅れれば遅れるほど、受け取れる養育費の金額が少なくなります。
もし、離婚後に養育費の請求をする場合は、子供のためにも早めに対応するようにしましょう。
(2)時効にかかる場合
(1)の場合以外にも、養育費の請求が時効にかかっている場合には、養育費を請求できなくなります。
公正証書などで取り決めをしていても、同様です。
養育費は、離婚後いつでも請求できるわけではないので、時効を確認しながら、早めに請求をしていくようにしましょう。
①養育費請求の時効期間
離婚後の養育費請求の時効期間は、以下のとおりです。
協議離婚時に養育費が取り決められて公正証書を作成している場合は5年
家庭裁判所の調停や審判で養育費を決定した場合は10年
子育てなどで忙しくしていると、あっという間に時間が経ってしまうことは十分に考えられます。早めに請求をしていきましょう。
一方、以下の場合には、時効期間なしとなります。
養育費を取り決めずに離婚した場合
公正証書などを作成していない場合
公正証書を作成していない場合は、時効にかからないことから、離婚後の養育費請求に有利であるように勘違いする方がいるかもしれません。
しかし、決してそういうわけではありません。
取り決めをしていない場合、養育費は過去に遡って請求することができませんので、この点にも注意しましょう。
②時効のカウントが止まる場合
養育費を請求する権利は、時効により消滅してしまいますが、以下のような場合には、時効期間自体のカウントが止まります。
権利の承認
裁判上の請求
仮差押・差押 など
権利の承認とは、以下のようなケースを意味します。
養育費を支払う側が、自分に養育費の支払義務があることを認める場合
養育費を支払う側が、支払われる側に養育費の請求権利があることを認める場合
養育費を支払う側が、養育費を支払うことを“口約束”だけで認めた場合は、後に裁判となった場合証拠になりません。
養育費の支払義務を相手方が認めているのであれば、せめて誓約書や念書など、何らかの書面の形を残しておきましょう。
裁判上の請求とは、養育費の請求に関し調停や裁判などを起こした場合を意味します。
公正証書を作成していても、実際に裁判上の手続を取っていなければ、時効のカウントは止まりませんので注意しましょう。
公正証書に基づき、裁判上の請求として調停手続を取った場合、時効期間は10年に延長されます。
仮差押・差押とは、養育費を支払うべき相手方が、養育費の支払いを怠っている場合、相手の給料や預貯金口座内の現金に対し強制執行手続をとることです。
支払う義務があるにもかかわらず、支払わない場合に、強制的に支払わせることができます。
3、離婚後に養育費請求をできる人
離婚後に養育費請求をできる人は、以下のとおりです。
母親または父親
子供
(1)母親または父親
離婚後に養育費の請求ができるのは、子供の親権を持つ母親または父親です。
日本の制度では、離婚をすると、父親または母親のどちらか一方しか親権を持つことができません。
通常は、親権を持つ親が子供を育てますから、親権を持つ親が親権を持たない親に対して、養育費請求をすることになります。
(2)子供
あまり知られていませんが、親権を持つ親だけでなく、子供自身も養育費請求をすることができます。
養育費はもともと子供が育つために必要なものですから、子供自身にも養育費を求める権利が認められています。
もっとも、子供が請求できるといっても、子供自身が養育費を自ら請求することは通常は行われず、親権を持つ親から請求するのが一般的です。
配信: LEGAL MALL