挫滅症候群の治療
挫滅症候群の治療では、まず集中治療室や被災地の現場で状態をモニタリングしながら、大量の輸液によって腎不全の発症を抑える必要があります。
輸液で十分な改善が難しい場合は、血液透析によって人工的に血中のミオグロビン濃度や代謝性アシドーシスを改善させます。
コンパートメント症候群に対して、筋膜切開をおこなうこともあります。
大量の輸液
大量の輸液は重要な初期対応であり、主に点滴で生理食塩水を大量に投与し、血中のミオグロビンやカリウムの濃度を減らします。
同時に重炭酸水素ナトリウムの投与により、尿のアルカリ化を図ることで腎臓への負担を減らします。
輸液は症状を重篤化させないために、できるだけ早急におこなう必要があるため、被災地の現場で開始することも多いです。
患者の飲水が可能であれば、経口での水分摂取も積極的に促します。
血液透析
血液透析は人工的に血液をろ過して余分な水分や老廃物を取り除き、正常になった血液を再び体内に戻す治療法です。
輸液で腎臓の状態が十分に改善されず、乏尿性腎不全や高カリウム血症が生じている場合に適応され、主に代謝性アシドーシスの改善や血中カリウム濃度の低下を目的としています。
筋膜切開
筋膜切開はコンパートメント症候群に対し、筋肉内の圧力を低下させることで血液を供給し、症状を改善させる治療です。
しかし、手足の圧迫時間が長いほど症状の改善が難しく、治療によって出血が止まらなくなったり、感染しやすくなったりするリスクもあります。
挫滅症候群になりやすい人・予防の方法
挫滅症候群は、圧迫を受けた身体の部位や性別によって発症リスクが異なります。
特に腕よりも脚に圧迫を受けた場合や、単肢よりも両肢に障害を受けた場合に発症しやすいです。
また、筋肉量の多い男性のほうが女性よりも発症リスクが高いとされています。
災害時に建物などの下敷きになったとき、挫滅症候群を予防するためには、救急隊員の助けを呼んだうえで、可能な限り水分を摂取して体内の有害物質の濃度を下げることが重要です。
同時に毛布などで身体を覆い、体温の低下を防ぐようにしてください。
関連する病気クラッシュ症候群
圧挫症候群
急性腎不全
乏尿性腎不全
高カリウム血症
代謝性アシドーシス
エコノミー症候群
参考文献
一般社団法人日本内科学会災害時の圧挫症候群と環境性体温異常
Emergency Care 4.クラッシュシンドローム
日本救急医学会雑誌挫滅症候群
一般社団法人日本救急医学会圧挫症候群
血圧クラッシュシンドロームとその対策
配信: Medical DOC
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