●列車の緊急停止ボタン押せるのは「人命の危機」
この事例を聞いたときに、似た問題として、駅で線路内にスマホを落として列車の緊急停止ボタンを押したという事案が一昨年にあったことを思い出しました(*)。
列車の緊急停止ボタンは「人命の危機」や「列車の運行への支障」が予想されるときに押すことが許されます。
スマホは高額で大切なものだと思います。何とかして取り戻したいという気持ちは共感できる部分がありますが、それに伴う施設側の負担を想像する必要があるように思います。
今回のケースに限らず、紛失・盗難については補償サービスへの加入によって、出来る備えをしておくのがベストだと思います。
たとえば現行のiPhoneの場合、月額740円〜1740円で「AppleCare+盗難・紛失プラン」が提供されています。
(*)「山手線止めてんだぞ」トラブル、発端の「非常停止ボタン」正しい使い方は? JR東・西に聞く
●オリエンタルランドの回答は
以上が甲本弁護士の解説となる。続いて、編集部は施設を運営するオリエンタルランドに対して、今回の相談内容とともに、「ディズニーの施設内でなくした物を営業時間外などに自力で探させてほしい」という客の要望に応じられない理由を尋ねた。
同社は次のように回答した。
「お客様の安全を守るため、ご自身での遺失物の捜索はお断りしております。遺失物に関する受付窓口(遺失物登録フォーム)を以下の通りご用意しております。こちらにご入力いただければ、当社にて遺失物の捜索を行っており、実際に回収に至ったケースもございます」
【遺失物の受付】
また、東京ディズニーリゾートでは、テーマパーク利用約款で運営会社の責任と免責について規定している。約款の12条は「お客様の不注意による事故やお客様同士のトラブルについて、当社、当社関連会社およびディズニーは法令に基づき賠償義務が発生する場合を除き、責任を負いかねます。貴重品や手荷物は、お客様の責任で管理をお願いします」としている。
同社は「お客様の手荷物は、お客様自身での管理をいただいております。こちらはテーマパーク利用約款の他、各施設のキャストからもお願いをしております」とした。最後に「ご自身のご貴重品やお手荷物の管理にお気をつけて、パークをお楽しみください」とのメッセージを寄せた。
【取材協力弁護士】
甲本 晃啓(こうもと・あきひろ)弁護士
理系出身の弁護士・弁理士。東京大学大学院修了。丸の内に本部をおく「甲本・佐藤法律会計事務所」「伊藤・甲本国際商標特許事務所」の共同代表。専門は知的財産法で、著作権と特許・商標に明るい。鉄道に造詣が深く、関東の駅百選に選ばれた「根府川」駅近くに特許事務所の小田原オフィスを開設した。
事務所名:甲本・佐藤法律会計事務所
事務所URL:https://ksltp.com/
配信: 弁護士ドットコム