「ひらめき」は寝ている間につくられる…脳科学者が教えるアイデアを生み出す科学的方法|武器になる教養30min.編集部

「ひらめき」は寝ている間につくられる…脳科学者が教えるアイデアを生み出す科学的方法|武器になる教養30min.編集部

「悩んでいたけど、寝て起きたら解決策が見つかった」「リラックスしていると新しいアイデアが浮かぶ」。みなさんも、そんな経験をしたことはないでしょうか? 新刊『アイドリング脳 ひらめきの謎を解き明かす』を上梓した、富山大学卓越教授の井ノ口馨さんの研究によって、そのメカニズムが次々とわかってきました。脳をうまく働かせて、ひらめきを生み出す科学的方法とは……?

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脳は眠っているときも活動している

──そもそも「アイドリング脳」とは、どのような意味なのでしょうか?

ひとことで言えば、「潜在意識下での脳の働きや活動」のことです。車が停まっているとき、エンジンをふかしていることを「アイドリング」と言いますよね。人間も同じように、眠っているときやリラックスしているとき、身体は休んでいるけれども、脳はけっこう活発に動いているんです。

もちろん、脳全体が活発になってるわけではありません。起きているときと同じくらい活動している脳の領域があるということです。

たとえば、おでこのすぐ後ろに前頭前野という大脳皮質の領域があります。非常に高度な精神活動を司っている部分ですが、ここは眠っているときでも、起きているときと同じくらい活動している。しかも、起きているときにはできない重要なことをやっているんです。

 

──睡眠中の脳とリラックスしているときの脳では、働きは違うのでしょうか。

眠っているときに脳は情報処理をしていますが、それは潜在意識下で行なわれているので、われわれの意識には上ってきません。では、どんなときに意識に上ってくるのか。それはリラックスして、ボーっとしているときだと思うんです。

経験上、そういうときにいいアイデアがパッとひらめくことがある。そこが睡眠中の脳と、リラックスしているときの脳の働きの違いだと思います。

 

──マウスを使った研究でこうした事実が明らかになってきたわけですが、マウスの脳で起こっていることは人間の脳でも起こっていると言えるのでしょうか。

それには根拠がありまして、マウスの遺伝子と人間の遺伝子はほとんど同じなんです。何らかの機能を持って働く遺伝子は、マウスと人だと90パーセントくらい同じ。猿と人だと98パーセントくらい、チンパンジーに至っては99パーセント以上同じなんです。

つまり、脳をつくっている部品はほぼ同じだということです。ということは、脳の働きも基本的には同じだと言えるでしょう。

「ひらめき」を生み出す科学的方法

──ひらめきがほしいと思っている人は多いと思うのですが、「アイドリング脳」を働かせるいい方法はありますか?

新しいアイデアを思いつきたい、悩みごとを解決したいなど、みなさんもふだんからいろんなことを考えると思います。とくにビジネスパーソンの方は、「新しい企画を出しないさい」と言われたら、勤務時間中にいろんなことを調べて徹底的に考えますよね。

でも、なかなかいい考えが出てこない。そんなとき一番おすすめなのは、夜、寝る前にベッドの中で、1分間くらいそのことを思い出してみることです。そうやって脳に指令を与えるんです。すると、眠っている間に脳が勝手に解決法を考えてくれます。

 

翌朝、目が覚めたとき、「あ、こうすればいいんだ」というひらめきが訪れるかもしれません。私自身、そのような経験を何度もしていて、ずいぶん長い間、この習慣を続けています。

ポイントは「1分間くらい」というところです。あまり長く考えていると、眠れなくなってしまいます。とくにトラブルなどの解決法を考える場合、ネガティブな気分が増幅されてしまう可能性があるので、1分間くらいにしておいてください。

 

──他に、何かいい方法はありますか?

ここまでお話ししてきたように、脳は睡眠中にアイデアや解決法を見つけ出してくれます。でも、それは潜在意識下にあるので、われわれは気づきません。ですから重要なのは、それを潜在意識の外、顕在意識に上らせることです。

みなさん経験があるかもしれませんが、何も考えずにリラックスしているとき、たとえば会社帰りに満員電車の中でボーっと窓の外を見ているときに、パッとひらめくことはありませんか。

あるいは、カフェのような適当なノイズがある場所に行ってリラックスしていると、「あ、こうすればいいんだ」といいアイデアが浮かんでくる。そういうことってあると思うんです。

 

重要なのは、ひらめきが来るシチュエーションは、人によって違うということです。私の場合、南国のリゾートでエメラルドグリーンの海を見ながらリラックスしているとき、本当に大きなひらめきが、これまでの人生で2回訪れました。

研究上の重要なひらめきがバーンと来て、それが数年後に論文になって『サイエンス』という雑誌に掲載されました。

 

それ以外にも、私の場合、露天風呂がある温泉に行くとひらめきやすいというのもあります。人によってはジョギングをしているときにひらめくとか、音楽を聴いているときにひらめくとか、本当に人それぞれですね。

人によって違うということは、みなさんにも自分に合ったひらめきが来やすい状況、課題の解決法が浮かんできやすい状況が、おそらく経験的にあると思うんです。そういう時間をなるべくたくさん持つようにすると、いいアイデアが生まれるかもしれません。

 

※本記事は、 Amazonオーディブル『武器になる教養30min.by 幻冬舎新書』より、〈【前編】井ノ口馨と語る「『アイドリング脳 ひらめきの謎を解き明かす』から学ぶ脳とひらめきのつながり」〉の内容を一部抜粋、再構成したものです。

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