僧侶でありながら「神も仏もない」と思った時期も。障害がありながら「懸命に生きる3人の息子たち」と共に生きる日々【体験談】

僧侶でありながら「神も仏もない」と思った時期も。障害がありながら「懸命に生きる3人の息子たち」と共に生きる日々【体験談】

どんな将来が待っていても、本人の意思を尊重しながらを見守り続ける

――最近は「絵」以外にも興味が広がって来たようですね。

窪田 中学生になった今は、絵を描くことだけでなく料理することも楽しいようです。YouTubeを見てケーキを作ったのをきっかけに、今ではお正月にはおせち料理を作るくらい料理にはまっています。先日、特別支援学校の高等部に見学に行ったとき、調理実習の授業を見て「自分は将来、これをやるんだ」って、ますます料理に興味がわいてきたようです。

絵をやめてしまうのはちょっともったいない気もしますが、本人が「やめたい」と言ってきたら、それはそれでいいと思っています。

――息子さんたちの将来についてどのように考えていますか。

窪田 障害があるとはいえ、3人はその日そのときを懸命に生きています。ですから、親としてもできる限り本人たちの意思を尊重していきたいですね。

ありがたいことに長男が描いた絵を皆さんが評価してくださいますが、もし本人が描きたくないと思うならやめてもいいと思いますし、ほかにやりたいことができればそちらを伸ばしていってあげたいです。それが今は料理なので、妻と「そういう方向に進めたらいいね」と話しています。

二男は、自分の意思を言葉にすることはできず目と声で訴えるのが精いっぱいです。それでもできる限り彼の考えていることを理解していきたいですね。皆が笑っているときは二男も声を出して笑い、だれかが泣くと一緒に泣くし、感情表現がとても豊かです。本人は学校が大好きなので、そのためにもできる限り体調を整えられるように気をつけています。
三男はまだこれからどうなるかは想像できません。多動でじっとしていることが苦手ではありますが、長男の同じくらいの時期と比べると、言葉で少しコミュニケーションが取れるんですね。これからどんなことに興味をもつかはわかりませんが、できる限り本人の意思を尊重しながら、その成長を見守っていきたいと思います。

絵の先生と二人三脚で開催した「はるすなお展」。たくさんの人が見にきてくれることが何よりうれしい

――「はるすなお展」について教えてください。

窪田 長男が描いた絵がどんどん増えてきたころ、「せっかくこんなにいっぱい描いたのだから、みんなに見てもらったら」と先生が言ってくださったことを機に、先生と一緒に「はるすなお展」が始まりました。

思いもかけずたくさんの方が観に来てくださって「来年もやってね」っておっしゃるので、2回、3回、4回と続けることになりました。みなさんが来てくれることが、長男もとてもうれしくて、自信にもつながっているようです。

お話・写真提供/窪田充栄さん 取材・文 /米谷美恵、たまひよONLINE編集部

評判がいいからと、2回、3回と開催されていったという長男の個展。4回続けて入選した絵画コンクール。その才能をだれもが評価しているのにもかかわらず、「本人が『絵をやめたい』と言うならそれでいいと話す窪田さん。「知的障害者のアート活動にも注目されているなかもったいなくないですか?」という筆者のぶしつけな質問にも、「息子が絵で食べていく姿はちょっと想像がつきません」と、妻の奈保さんと笑いながら答えてくれました。ほかの子と違うと悩んだことがあったなんて思えないくらい、今はその違いを個性として受け入れているのだなと感じました。

「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

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