千葉県在住のUさん(50代女性)は30年ほど前のある夜、電車を寝過ごして自宅から10キロ以上も離れた終点まで行ってしまった。
乗っていたのは最終電車。戻ることもできず、タクシーを使うのも難しく、彼女は夜道を帰ることにしたのだが……。
<Uさんからのお便り>
もう30年近く前の話です。
終電で寝過ごして降りなければいけない駅を通り過ぎ、自宅最寄り駅から10キロ以上離れた終着駅で、乗務員の男性に起こされました。
改札を出るとタクシー乗り場は長蛇の列。所持金も少なく、他に交通手段がなかった私は意を決し、深夜の道路を歩いて帰ることにしました。
「日の出までに帰宅できればいいや」と開き直り、歩き始めて30分ほど経った頃。私の目の前に一台の車がスーッと止まったのです。
「さっき終電で寝ていた人でしょ?」
車から顔を出したその人は、車内で寝過ごしていた私を起こしてくれた乗務員でした
「女性がこんな深夜に一人で歩くのは危険だから、良ければ送って行きますよ」
私が警戒していることを承知の上で、彼は慎重に言葉を選んで申し出てくれました。
顔や職業がわかっている人だし、正直10キロの道のりを歩くよりはずっと助かるのは確か。お言葉に甘え、ありがたく後部座席に乗り込みました。
降りる時に「後日お礼をしたい」と申し出たものの、「仕事上のコンプライアンスの問題もあるので」と、名前も名乗らずに行ってしまいました。
それからしばらくの間は電車が駅に入って来るたびに「あの人では」と、運転席を見る癖が付いてしまった私でした。
あの時はありがとうございました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない……。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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