――上期を振り返って
販売数量は業務用、家庭用ともに増加した。業務用は外食産業を中心に需要は回復基調で、食用油の使用量が増えたと捉えている。家庭用はコスパを非常に強く求める傾向があり、特に買上点数が減少している小売業では価格へのこだわりが依然として強い。
サラダ油の販売は比較的堅調だが、オリーブ油は主要産地スペインで2年連続不作による価格高騰が急激過ぎて、消費離れが起きているのが現状だ。
しかしながら、オリーブ油の人気はまだまだ高く、各社ブレンド商品を発売し、価格に柔軟性を持たせて対応している。当社は、オレイン酸含有量が高いひまわり油をブレンドし、健康志向という面でお客様から評価を頂き、手応えを感じている。
他の健康油にも需要は流れている。当社の商品でいえば、長年販売しており人気のひまわり油「オレインリッチ」がそれに当たる。また、こめ油も健康油として市場に定着しており、味わいと風味と健康面で、消費者から支持されている。当社、グループ会社のボーソー油脂ともに好調だ。
2023年と比べると、原料相場が軟調になっており、適正な販売価格の形成に努めたが、売上高は若干の減少で着地した。
――価格改定について
2024年7月に10月出荷分からの価格改定を発表した。発表直後に為替が急速に円高に振れ、大豆、菜種の油脂原料相場も豊作観測から軟調に転じ、価格改定に対して心配される声もあった。しかし、ここにきて為替も再び150円を超え、世界的な油脂需要の堅調さから、原料価格についても大豆は下げ止まり、菜種は再び上昇し始めている状況だ。
さらに物流コストは下期になると上昇カーブが上がってくる形で、人件費や包装資材費も着実に上昇し、コストが下がるということは考えにくい。顧客ごとに現状を丁寧に説明して価格改定を進め、適正価格の形成に努めている段階だが、まだまだ時間は要すると考えている。
今まで油脂業界の価格改定は為替と原料相場と市況を主に行ってきた経緯がある。ボラティリティが大きい業界だったが、経費などのコスト環境も従来とは全く変わってきている。食用油は特に重量がかさみ、物流費の影響が大きい。市況の変動に一喜一憂するのではなく、上昇するコストについてしっかりと説明していく。
〈製粉・糖質との組み合わせ提案進化、ボーソー油脂・辻製油との商品開発も〉
――下期の方針を
創業来初となる営業組織の改編から1年と半期が経過したが、手応えを感じている。当社は多岐にわたる穀物を取り扱っており、専門度も重要なので、営業社員の教育はさらにブラッシュアップしている。今まで以上に価値を提供できる商品開発、提案を進めたい。
単に油脂、小麦粉、糖質を提案するのではなく、その組み合わせによって想像以上の解決策が生まれることもある。そのような提案事例をさらに広げ横展開していく。提案する中で、われわれにも新たな発見がある。それについて研究所で分析し、応用力を高め、新しい提案に結び付けていく。下期はさらに取り組みを進化させる。
――商品面については
ボーソー油脂がグループに入り、辻製油と資本業務提携も行った。油脂としては、こめ油とコーン油を拡充できた。それに伴う商品開発も両社と進めている。業務用のフライ油はコーン油を配合した香ばしさと味を付与し、ベタつき原因の物質を抑えることができる作用がある「フライオイル CK-UP」を新発売した。
10月に発売したこめ油配合の炊飯油「こめコート」は、冷凍や低温で配送しても米が老化してパサつくのを防ぐことができる。
これらは、ユーザーから要望を吸い上げて開発した商品である。好調の「Sベーカリーオイル」は、日本カレーパン協会の公認商品として拡販し、売上が大きく伸びている。製粉ルートを通じて提案し、さらに強化していく。
――大豆たん白の新ブランド「SOIA SOIYA(ソイアソイヤ)」について
ユーザーや業界からの評判が良い。先日もテレビ番組で開発経緯や商品提案の様子まで放映され、さまざまな問い合わせが来ている。当社は長年、大豆たん白を食品メーカーに提供してきた。今回は肉代替に捉われない新しい食品素材という切り口で提案しているが手応えを感じている。和食への提案でリサーチしている段階だが、幅広い用途を開拓していく中で、どの程度の規模で設備を充実させていくか、慎重にマーケットを見て検討していきたい。
――下期の見通しを
穀物相場は、2025年の1~3月は決して楽観視できるものではない。物流費、人件費、包装資材は右肩上がりに上昇していき、状況如何で来年はさらに厳しい環境になると考えている。先ずは10月からの価格改定実現に向けて、引き続きしっかりと取り組んでいく。
〈大豆油糧日報2024年12月2日付〉
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB