かかりつけの小児科で「風邪」と診断されたけど、なぜか不安に
理絵さんが沙紀ちゃんの様子に違和感を感じ始めたのは、4歳の秋です。
「最初は、転びやすくなった? 少し太ってきたかな?と思ったのですが、まさか病気だとは思いませんでした。風邪っぽくて元気がなく、『頭が痛い』と言うこともあり、かかりつけの小児科を受診しました。小児科では『風邪』と診断されました。でも、『本当に風邪かな?』と気になって不安がぬぐえませんでした。
そのうちコップを持ったりすると右手がプルプルと小きざみに震えるようになりました。運動後に、異常に汗をかくのも気になって『大きな病院で診てもらったほうがいいかも・・・』と考えていた矢先、朝方、繰り返し嘔吐をしたんです。
看護師の仕事をしていたこともあり『もしかしたら脳の病気かもしれない。すぐにCT検査ができる病院に行ったほうがいい』と思い、家から近い大きな病院に電話をしました。『すぐに来てください』と言われて、夫に車で病院に連れて行ってもらいました。『脳の病気?』と疑いながらも思い過ごしかもしれないため、夫には『もしかして脳の大きな病気かもしれない』とは、怖くて言えませんでした。
CT検査と脳のMRI検査をしたところ、医師から『脳幹に何かあるから、すぐにこども専門の大きな病院(以下こども病院)に行ってほしい』と言われて、紹介状を書いてもらい、その日のうちにこども病院に行きました」(理絵さん)
小児脳幹グリオーマと判明。医師からは「ほとんどの子が1年以内に亡くなる」との説明が
こども病院で再び検査をしたところ、沙紀ちゃんは脳腫瘍の疑いがあると言われて、病変の一部をとって、顕微鏡で詳しく調べるために生検手術をすることに。また髄液の循環がうまくいかず、脳室内に髄液がたまり、脳を圧迫する水頭症ということもわかり、生検手術の前に第三脳室底開窓術という水頭症の手術も行うことになりました。
「水頭症は、頭が大きくなる特徴がありますが、私は気づきませんでした。先天性ではなかったので、症状が顕著でなかったのかもしれません。思い返すと、自転車用のヘルメットがきついかな? と思ったことはありましたが、まさか水頭症になっているとは思いませんでした。
また生検の結果が出るまで1カ月ぐらいかかるとの説明でしたが、結果にかかわらず治療を始めたほうがいいと言われて、別の大学病院で副作用が少ない陽子線治療を受けるように医師からすすめられました。
陽子線治療は、放射線療法の1種で、がん細胞のみを狙い撃ちして放射線を照射するため副作用が少ないと説明されました。しかし行える医療機関は少なく、順番を待たなくてはいけないとのことでした。でも陽子線治療を希望して待つことにしました」(理絵さん)
陽子線治療があと1週間ほどで受けられると決まったときに、生検の結果が出ました。
「医師からは、『小児脳幹グリオーマ』と言われました。小児がんです。
『治療法が確立されておらず、陽子線治療を受けても一時的な延命にしかならない。ほとんどの子が1年以内に亡くなってしまう』と告げられました。
看護師をしていることもあり、脳幹と聞いたときに手術は無理だろうな・・・と思いました。一緒に医師からの説明を聞いて夫もたいへんショックを受けていましたが、夫婦で話し合いました。ほとんどの子が1年以内に亡くなってしまうと言われたけど、奇跡を信じたかったし、最善の治療をしてあげたくて、陽子線治療を受けることにしました。
治療が受けられることになったので、私が付き添い、週末に夫と長男が面会に来るという生活が始まりました。
夫は、病気のことをいろいろ調べて、グリオーマの患者会にも入会して情報収集をしてくれていました」(理絵さん)
配信: たまひよONLINE