これから変動金利を選ぶ場合に心がけてほしいこと
今後、変動金利で住宅ローンを組む場合、無事に返しきるまでに心がけてほしいことがいくつかあります。
最後まで無理なく返済を続けられるか
大雑把に言うと、住宅ローンの審査は現在の収入と金利での返済が可能であれば通ります。しかし、返済はマラソンのような長期戦です。大切なのは、長い返済期間中に金利が上昇して返済額が増えた場合や、教育費などの支出が増えた時期でも返済を続けられるかどうかです。
たとえば、4,000万円を35年で借りた場合、当初の金利が0.5%なら月々の返済額は約10.4万円ですが、10年目に金利が2%に上昇すると約11.7万円に増加します。 この差額1.3万円を、教育費のピーク時期と重なっても支払い続けられるでしょうか。
長期のローンを組む場合は、家計が最も厳しい時期でも返済に困らないかを考え、無理なく返済できる金額に合わせて物件の予算を決める必要があります。
金利が上がらなければ無理に繰り上げ返済はしなくてよい
住宅ローンを少しでも早く返済したいと考え、繰り上げ返済を検討する人も多いでしょう。
しかし、変動金利で金利が上がらない、あるいは上がったとしてもわずかな場合は、繰り上げ返済を急ぐ必要はありません。
特に、住宅ローン減税を受けている間は、ローン残高に応じて所得税の還付額が決まります。そのため、ローン残高を減らしてしまうと、せっかくの減税効果を十分に活用できなくなってしまうのです。
また、繰り上げ返済のために貯蓄を使いすぎると、急な出費に対応できなくなる可能性もあります。必要以上に手元のお金を減らさないようにしましょう。
住宅ローン金利以上で運用していざというときに備える
低金利の住宅ローンで浮いた資金は、運用して将来に備えましょう。
たとえば、住宅ローン金利が0.5%のとき、繰り上げ返済ではなく年利1%で運用すれば、0.5%分の利益が生まれます。100万円なら年間5,000円の差益となり、長期で積み上げると、さまざまな用途に活用できます。
ただし、預貯金だけでは住宅ローン金利を上回る運用は難しいのが現状です。また、債券のような比較的安定的な資産でも、元本割れのリスクはゼロではありません。しかし、年利1%程度を目標とする場合、慎重な運用であれば大きな損失を避けられる可能性が高いでしょう。もちろん、リスクを取れる人は、それ以上のリターンを狙うこともできます。
余裕資金を運用していて住宅ローン金利が上昇してきたら、状況に応じて運用した資産を繰り上げ返済に充てるとよいでしょう。
団信は特約付きを選び、不測の事態に備える
住宅ローン返済中には、健康リスクへの備えも必要です。民間の住宅ローンでは団体信用生命保険(団信)への加入が必須ですが、通常の団信(一般団信)は、死亡・高度障害時のみが保障対象です。
一方、特約付き団信なら、死亡・高度障害以外のがんなどで所定の状態になった場合でも、住宅ローンの残債分が支払われます。特約付き団信には「がん保障特約付き」「3大疾病保障特約付き」「8大疾病保障特約付き」などがあり、金融機関によって取り扱う種類は異なります。
がんになった場合に住宅ローンの残債分の保険金を受け取れる民間の生命保険に加入すると、年齢にもよりますが、保険料は数万円 になるでしょう。
しかし、3大疾病保障特約付き団信の場合、一般的に年0.2~0.3%程度の金利上乗せで、がん・急性心筋梗塞・脳卒中にかかったときの保障を得られます。たとえば、4,000万円を35年で借りた場合、金利が0.5%なら月々の返済額は約10.4万円ですが、0.8%なら約10.9万円と約5,000円が保険料相当となります。
つまり、住宅ローン返済中の健康リスクに備えるなら、民間の生命保険より特約付き団信を活用するほうが合理的といえるのです。
ゼロ金利解除後も、住宅ローンの変動金利の優位性は変わらないでしょう。けれども、変動金利を選んだ人は、金利が上がる前提で返済を続けることになります。以前よりシビアな状況になりますが、リスクヘッジをしながら乗り切っていきましょう。
配信: 幻冬舎Plus
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