「娘が車をぶつけた証拠がないのに、相手方からぶつけたと言われている。どのように対処すればよいでしょうか」
そんな質問が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者の娘が、買い物を終えて駐車場に戻ると「あなたの車がぶつかって車にへこみがついた」というメモがワイパーに貼られていました。相手方の連絡先が書いてあったので連絡すると、車のへこみは間違いであることが分かりましたが、今度は「こすったキズがある」と言われたそうです。
相談者としては、娘はぶつけた記憶はないこと、こすったキズは前後の移動ではつかないことから、娘が原因ではないと考えています。相手方はこすり傷の写真をもとに「逃げられないぞ」と強く言ってきますが、相談者としてはどのように対応するべきでしょうか。坂田信太弁護士に聞きました。
●娘が損害賠償を負う可能性は?
——今回のケースで、娘が損害賠償を負う可能性はあるのでしょうか。
接触事故による物損の損害賠償請求は、被害を受けたと主張して損害賠償を請求する側が、証拠によって、こちらの故意・過失に基づく行為によって損害を受けたことを証明する必要があります。こちらの車と接触して傷ができたことが客観的に分かる証拠がなければ、相手方の請求が法的に認められることはありません。
本件では相手方が主張する被害の内容が不自然に変わってきていることから、おそらく虚偽の申出による不当な要求と考えられます。
たとえ「こすったキズ」の写真を相手方が示してきても、それが娘さんの車と接触してできたものという証拠は出せないと思われます。
こういった場合、車のどの場所なのかよく分からない写真などを出してくることが多いので、「こちらの車と場所を突き合わせて確認するので、もう少しどの場所のキズなのかが分かる写真を下さい」と要求するのがよいと思います。おそらく相手方はそのようなきちんとした証拠を出せません。
●警察に相談しておいた方が良い理由
——このようなケースの場合、警察に届け出た方が良いのでしょうか。
まず、メモに書いてある電話番号に連絡する前に、警察に相談するという選択があったように思います。全く身に覚えのないことなので、詐欺の可能性が高い、という相談です。
後日、相手方から当て逃げ(報告義務違反)と言われないようにするという意味もあります。まず警察に届けておけば、心当たりがないのにあえてこちらから相手方に連絡を取る必要もないと言えます。
また、相手方の要求がエスカレートして、危害を加えるだとか、SNSで晒すといった脅迫行為になってきた段階で、警察に相談するということも考えられます。
そこまでいかない段階であれば、弁護士にご依頼いただき、弁護士から受任した旨の連絡をするとともに、客観的な証拠による立証を求める内容証明郵便を送れば、それだけで何も言ってこなくなることも多いです。
警察から、軽微な物損事故によるトラブルという理解しか得られないと、民事不介入を理由にあまり真剣な対応をしてもらえない可能性がありますが、脅迫や恐喝(おどしてお金を要求すること)ということになれば立派な犯罪ですので、こちらの被害の程度に応じて警察の対応も真剣なものになってくることが期待できます。
それでも取り合ってもらえない場合には、弁護士に依頼して、弁護士の同行により、被害届の提出や刑事告訴を行うのがよいでしょう。
配信: 弁護士ドットコム