航空会社ジェットスター・ジャパンの客室乗務員2名が、業務妨害やハラスメントを理由に出勤停止の懲戒処分を課したことは事実に基づかず不当だとして、処分の無効確認等を求めた訴訟で、東京地裁は12月2日、両名に対する処分の無効を認め、出勤停止期間分の賃金支払いを命じる判決を言い渡した。
業務妨害で出勤停止処分を課された原告で労働組合「ジェットスタークルーアソシエーション」(JCA)執行委員長の木本薫子氏は、「自身の正当性が認められた」と判決を評価しつつも、「社内のガバナンスがきちんとしていれば必要ない裁判だった」と話し、「判決はゴールではなく、新たなスタート」だとして、労使間の信頼が強固な職場環境の実現を目指すという。
●処分無効と賃金支払いだけでなく「慰謝料請求」も認める
今回の裁判で原告となったのは、木本氏とJCA副執行委員長の片桐麻記氏の2名。
原告側によると、会社は木本氏に対し、JCAとして発信した未払い賃金に関するメールが、木本氏による誤った情報の流布扇動だとして、会社の規律を乱し、人事本部の業務を妨害したとして20日間の出勤停止処分を課された。
片桐氏に対しては、自身の給与支払いミスについて会社に問い合わせたところ、会社側から2カ月以上連絡がなかったため、上長等に対応を求めるなどしたところ、その言動が「精神的苦痛を与えたハラスメント」だとして、15日間の出勤停止処分を課された。
原告側は、木本氏の行為は組合活動として正当なものであり、片桐氏の行為も賃金に関わる質問は正当な権利行使で、いずれも不当だと主張。不服申立てが棄却され、処分が確定したため、2023年4月に懲戒処分の無効確認訴訟を提起した。
判決では、木本氏個人による扇動に該当する行為はなかったと認定され、懲戒処分は無効となり、出勤停止期間分の賃金についても全額支払いを認めた。片桐氏についても、給与支払いミスがあったと認定した上で、処分無効と賃金全額支払いを認めた。
原告側代理人を務めた竹村和也弁護士によると、判決は会社の懲戒処分には組合活動に影響を及ぼした違法性があるとして、会社が木本氏に対して慰謝料50万円を支払うよう命じた。
●「裁判の繰り返しは会社にも社員にも望ましくない」
木本氏は、今後も会社側の対応が改善されないようなら、「すべて今回のような裁判手続きで解決しなければいけないことになる」とし、健全な労使関係の構築や職場環境の改善に加え、安全文化を維持することの重要性を訴えた。
「裁判を繰り返すことは、会社にとっても社員にとっても望ましくないですし、私たちの組合活動の本意でもありません。今回の判決を会社には真摯に受け止めていただいて、(健全な労使関係の構築等は)ここからがスタートだと思っています」(木本氏)
片桐氏も、「日々の航空の安全、コンプライアンス、そしてキャビンクルーの健康が損なわれる可能性があると感じた時には、会社や仲間を守るためにしっかりと声を上げるべき」と強調する。
「それがお客様に最高のサービスと安心を提供するための私たちの責任だと考えています。裁判では勝ち負けではなく、公正な判断を求めました。会社には今回の判決を契機に、真摯に労使関係の改善に向けた建設的な対話を進めていただきたいと願っています」(片桐氏)
配信: 弁護士ドットコム