上司から指導ないのに「仕事できない」と低評価 正社員→契約社員にさせられそう… 違法じゃないの?

上司から指導ないのに「仕事できない」と低評価 正社員→契約社員にさせられそう… 違法じゃないの?

●上司の態度は「パワハラ」の可能性

——十分に指導せず「仕事ができない」と評価したり、相談者に質問させなかったり、無視するような上司の態度はパワハラに当たる可能性はありますか。

パワハラにあたる可能性があります。

厚生労働省が事業者向けに公開しているパワハラに関する指針(「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」、以下「パワハラ指針」といいます)で、パワハラにあたる代表的な6個の類型が定められています。

この類型のうち、十分に指導せず、質問もさせずに「仕事ができない」と評価する点は、「過大な要求」に該当する可能性があります。

相談者が上司の思うように動けないと、無視されるという点は、「人間関係からの切り離し」に該当する可能性があります。

●パワハラ放置した社長にも賠償責任の可能性

——上司の態度がパワハラにあたるとして、相談者が正社員から契約社員に変更を迫ることは、会社側に問題はないのでしょうか。

相談者は心療内科に通うほどに追い詰められており、会社側は慎重な対応をすべきでした。

社長がパワハラを知っていたのであれば、契約社員になるよう迫ることは上司と一緒に過大な要求によるパワハラをしたといえます。社長自身にも賠償責任が生じ、契約社員となる同意を得たとしても無効となる可能性があります。

社長は相談者に契約社員となるよう求めるまでパワハラを知らなかったとしても、パワハラ指針で事業者に求められている、(1)パワハラを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発、(2)相談体制の構築、(3)事後的な適切対応などの義務に違反しています。

パワハラを知った時点で契約社員の話は一旦撤回し、必要性をよく検討してから改めて話をすべきでしょう。

【取材協力弁護士】
草木 良文(くさき・よしふみ)弁護士
東京弁護士会所属。不動産・飲食・イベント会社などを中心としたトラブル、労働問題、債権回収、離婚・男女問題などを扱う。2022~2024年度東京弁護士会・法教育委員会副委員長。
事務所名:小野瀬有法律事務所
事務所URL:https://kusaki-law.com/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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