ディープクランクで日本のサケが釣れるのか?試してみた!【新潟県五十嵐川】

ディープクランクで日本のサケが釣れるのか?試してみた!【新潟県五十嵐川】

日本の川では「サケ」という魚を勝手に釣ったりはできない。水産資源保護法によって内水面のサケ釣りが基本的に禁止されているからだ。でも秋になると一部の河川では「サケ有効利用調査」として、サケ釣りを楽しむことができる。私は昨年、新潟県三条市を流れる「五十嵐川」で、念願のサケを仕留めることができた。そして、今年もサケを求めて五十嵐川へ。ただし、今回は単なるサケ釣りではなく、ディープクランクを使っての挑戦だった!

そもそもディープクランクとは何ぞや?

サケの釣り方は大きく分けて、ルアーとフライとエサ釣りの3つがある。中でもルアーで釣る場合は、ミノーかスプーンを使うのが一般的だ。ところが昨年、五十嵐川で釣りをした際、地元のアングラー「丸山さん」のタックルを見て私は驚愕した。彼のタックルはベイトタックルで、しかもルアーがディープクランクだったのだ。ずんぐりむっくりとしたクランクベイトの中でも、巨大なリップを擁して、かなり深く潜るように設計されているものがディープクランク。元々バス用なので、正直言って、日本ではバス釣り以外に使われることがほとんどない。

丸山さん「でも、実はディープクランクで釣れるんですよ。サケは」

この時期、川を遡上してきたサケは産卵を意識しているので、それほど食欲旺盛ではない。だから、威嚇的な要素を持つルアーで怒らせた方が口を使ってくれるという面があるのだろうか?とにかく、昨年その話を聞いた時点で、私は来年はディープクランクでやってみようと決心した。

そしてやってきた2024年のサケ釣りシーズン。運よく有効利用調査にも当選できたので、ディープクランクを山のように持って新潟へと向かった。今回一緒に釣りをするメンバーは小学校時代からの釣り友達であるオオモリ。ただし、仕事の都合で到着が遅れるということなので、漁協による朝7時のミーティングに参加したのは私のみとなった。ちなみにミーティングで様々な説明をしてくれた五十嵐川漁協の方も「大森さん」なので、私の友人のオオモリとは、漢字とカタカナで表記を分けている。

初日となる11月14日は、丸山さんも有効利用調査に参加したので、釣るコツや詳細を色々教えてもらった。でも、最後に彼が言ったこの一言に集約されると思う。

丸山さん「レンジを合わせるとか、アクションとか、色々あるとは思いますが。結局は、ルアーをサケの目の前に送り込んで、そこで動かすことが大事なんです」

川を遡上するサケは浅瀬を通る率が高いので、目で見えることが少なくない。それを狙って目の前にルアーを送り込む…それがセオリーなのだ。ただ、その目の前を通すためには、ルアーの視認性を上げる必要がある。だから、丸山さんのクランクベイトは背中や側面に白いマニキュアが塗られていた。

皆さんご存じの通り、地球温暖化の影響なのか、ここ数年日本の河川を遡上するサケが激減している。それは五十嵐川であっても例外ではない。11月2日にスタートした有効利用調査だが、11月8日までは連日5匹以下。9日15匹、10日25匹と一時的に数があがったものの、その後またひとけたになったりして、安定していない。その状態で未知数のディープクランクを使うというのは、かなりのギャンブルといっていいだろう。それでも私はディープクランクを選択した。なぜなら面白いから。2日間の釣行でなんとか1本釣れば、自分としては満足なのだ。

彼がディープクランクでのサーモンフィッシングを教えてくれた地元の名手・丸山さん。20年以上前、私が出演していた雑誌連載の愛読者だった。 ©横沢鉄平

五十嵐川漁業組合の有効利用調査で、事務局長を務める大森さん。強いリーダーシップで、運営している。かつては凄腕のバスマンで、メキシコで12ポンド8オンスの巨大バスを釣った経験もある。現在はフライマン。 ©横沢鉄平

丸山さんのタックルケースに収められた「ファットフリーシャッド(ボーマー)」。背中などに白いマニキュアを塗ることで、視認性を高めている。 ©横沢鉄平

五十嵐川。新潟県三条市を流れ、大河・信濃川に注ぎ込む。 ©横沢鉄平

開始20分でミッション達成!

釣り開始時刻を回っても、私はのんびりと準備をしていた。歴代のディープクランクを見つめて、何から投げるべきか思案をしていた。短い距離でよく動かすことを考えると、本当は「T.D.ハイパークランクTi(DAIWA)」を使いたい。でも、あの急流の中での強度を考えると、金属リップはちょっと不安がよぎる。相手となる魚もバスよりはるかにでかいし、この釣りで強度というのは非常に重要な要素だ。

丸山さんが愛用する実績ルアーは「ファットフリーシャッド(ボーマー)」。でも、今回自分の釣具倉庫から「ファットフリーシャッド」を見つけ出すことができなかった。そこで、白羽の矢を立てたのが「キックバッカ―(デプス)」だった。強度的には申し分ないし、なんとなく急流の中でも上手に水を受け流してアクションしてくれそうな気がした。側面がフラットな点も「ファットフリーシャッド」っぽくて、サケマス類に強そうだ。これをシングルフックに付け替えると、丸山さんから電話が入った。

丸山さん「もう釣れましたよ!」

今日はいい日に当たったのかもしれないぞ。さっさと準備を終わらせて、ポイントに駆け付けたのが9時半。そして、「キックバッカ―」を投げてみた。流心に投げると、すぐに水を捉えてアクションし始めた。しばらく巻くと、リップが川底を捉えて、ボトムノックするのがよくわかる。

10mほど先の浅瀬に、うっすらとサケの魚影が見える。あれは産卵床なのだろうか?何本かのサケが出入りしているようにも見える。ただ、この周辺は先行者が上流から狙っていたので、その下流側を引き続けた。見えるサケを狙い撃ちにする釣りではないが、きっと浅瀬の向こうの一段深くなった場所にもサケはいるはず。そう信じて、ボトムを叩いていった。すると、浅瀬のちょっと沖でロッドにズシンと重みがかかった。「根がかりか?」。沈んでいた枝でも掛けたような重さだった。強引に浅瀬へと引き上げようとしたら、黄色いルアーの後ろに、巨大な口が見えた。

私「サケだ!」

浅瀬に出てきたサケは、それまでの重い引きではなく、派手な大暴れを繰り返した。丸山さんの助けもあって、無事にランディング。72cmのメスだった。口にはライムチャートの「キックバッカ―」。ディープクランク、やっぱり釣れるんだ!なんと釣りを始めてわずか20分後の出来事だった。やや、あっけない感もある。

私の選んだディープクランクは、キックバッカ―(デプス)。レギュレーション通り、フックをシングルに付け替えて使用。泳ぐ時の姿勢が極端な前のめりにならない点が、なんとなく好き。 ©横沢鉄平

たったの20分で釣れてしまった五十嵐サーモン。72cm、メス。口にはしっかりと「キックバッカ―(デプス)」がぶら下がっていた。これにてミッション達成! ©横沢鉄平

岐阜在住の釣り友オオモリが11時頃到着。45年来の釣り仲間で、サーモン挑戦4年目に突入したが、まだオデコ。 ©横沢鉄平

五十嵐川漁協の「鮭小屋」と呼ばれる事務室。有効利用調査エリアのほぼ最上流に位置していて、釣りの前後には必ず立ち寄るのがルールだ。 ©横沢鉄平

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