登下校中の小学生を無断撮影、中国語アカウントの投稿が波紋 米沢市は「削除依頼をしたが…」

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●罪に問うのが難しい

公道上で子どもが勝手に撮影されるのは、子どもの安全を守る観点から避けたいですし、気持ちの悪いことでもあります。

ただ、刑法上、このような撮影を禁じる規定は特にありません。 また、ストーカー規制法、迷惑防止条例などで規制ができないかも問題となります。

ストーカー規制法上の「つきまとい」は、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」がある場合に認められます(2条1項柱書)。

本件で、撮影者が子どもに対してこれらの感情を充足する目的があるとはいえないと思われますので、適用は難しいと考えられます。

迷惑防止条例上の「つきまとい」は、「特定の者に対する妬み、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」(東京都の場合5条の2第1項柱書)がある場合に認められます。

本件で、撮影者が子どもに対してこのような感情を充足する目的を持っているとも思えませんので、適用は難しいでしょう。

軽い罪にはなりますが、軽犯罪法の適用も考えてみます。

同法では、「他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者」を、「拘留又は科料に処する」としています。

「拘留」は、1日以上30日未満、刑事施設に拘置(刑法16条)するもので、 「科料」は、1000円以上1万円未満(同法17条)のお金を支払うものです。

動画では、リュックサックを背負って歩く小学生らしき子どもたちの背後を、撮影者は動画を撮影しながら追い続けています。そこで、「不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方」で、「他人につきまとった」にあたるとして、軽犯罪法の適用はあり得ると思います。

ただし、軽微な犯罪ということもあり、実際に警察等が動くかどうかは微妙なところです。

●民事上の責任は?

民事上、肖像権侵害を理由として損害賠償請求をしたり、撮影した画像・動画の削除を求めることは考えられます(民法709条)。

肖像権とは、個人の私生活上の自由の1つとして、承諾なしにその容ぼう・姿態を撮影されない自由、などと定義されています(最高裁昭和44年12月24日判決等参照)。

なお、無断で撮影された、というだけでは、ただちに肖像権侵害が成立するわけではありません。撮影の必要性と、個人の肖像権保護の利益のどちらが上回るかが比較され、個人の受忍限度を超えている場合に、不法行為が成立します。

受忍限度を超えるか否かの判断では、撮影者の地位、撮影された者の活動内容、撮影場所、撮影目的、撮影の態様、撮影の必要性などを総合的に考慮するものとされています。

撮影者の立場から、撮影の目的や必要性を肯定する事情としては、以下が挙げられます。

1)中国語と英語が併記された字幕で、安全面の問題を指摘しており、(形式的には)注意喚起の目的である

2)撮影が公道上で行われている。また、やや遠目から後ろ姿を撮っているにすぎず、顔は写っていない

しかし、1)については、それならばわざわざ背後から追いながら子供を撮影する必要性まではないでしょう。むしろ撮影によって子供を危険にさらすことにつながりかねず、逆効果です。

2)についても、一般の子供たちが勝手に撮影され、危険にさらされることを正当化するまでの事情とはいえないでしょう。

子供たちが、どういう場所を、どのように(大人たちに保護されないで)歩いていたのかが分かるだけでも、防犯上は問題がありますし、近所の人であれば、後ろ姿だけでもどこの子供か分かってしまう可能性も十分にあります。

以上より、受忍限度を超えており、不法行為が成立すると考えられます。

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