お口の健康と栄養素が関係あるって本当?歯科医院で勤務する管理栄養士の視点からお教えいただきました。

お口の健康と栄養素が関係あるって本当?歯科医院で勤務する管理栄養士の視点からお教えいただきました。

歯科医院といえば、虫歯や歯周病の治療をしたり、歯みがきの指導を受けたり・・・口腔内の治療やケアだけを行うところだと思っていませんか?

実は、口腔内の健康と栄養素には深いかかわりがあるのです。

今回は、歯科医院で管理栄養士として働く古澤安奈さまに、口腔と栄養の関係についてお話を伺いました。

口腔と栄養に関係があるって本当?

実は、口腔内の健康を考える上で、栄養摂取はとても重要です。

そのため、歯科医院で栄養相談をおこなっているところもあります。

栄養相談で一番多いのは甘いもののコントロールです。

基本的に、甘いものはむし歯の原因になるため、過剰に摂取することは望ましくありません。

ですが、私は『ただ甘いものを我慢する』のではなく、『甘いものを欲してしまっている体の状態』に着目しています。

実は、たんぱく質不足、ビタミンB不足などの方が、しっかり栄養素を摂ることで自然と甘いものが減らせるといわれています。

例えば、たんぱく質を体重あたり1.2~1.5gをきちんと食べることで甘いもの欲を抑えることに繋がるのです。

また、その他に甘いものがやめられない理由としては以下のものがあります。

・血糖値乱高下

糖質が多い食品を食べること急激に血糖値があがります(血糖値スパイクといいます)。

急激に血糖値が上がると、私たちの体は血糖値を下げようとインスリンが過剰に分泌し、結果、今度は急激に血糖値は下がります。

急激に下がっている状態の時に眠気やだるさ、集中力低下等が起こります。

また、血糖値が下がった状態は、身体にとって危険だと感じるため、すぐに血糖値を上げることのできる甘いものを食べたくなってしまいます。

この血糖値の乱高下を繰り返すことで甘いものを継続的に食べたくなってしまうループに入ってしまいます。

・カンジダ

腸内にいるカンジダ菌の栄養源は糖質です。

糖質を食べるほど菌は増え、さらに多くのエネルギーを欲するため、その影響を受け、甘いものを食べたくなってしまうことも考えられます。

腸内環境を整えることも重要です。

・セロトニン不足

糖質が過剰な食事になると相対的に幸せホルモン(セロトニン)をつくる材料であるたんぱく質が不足しがちになります。

また、甘いものを食べることで、一時的にセロトニンが出るので幸せな気持ちになります。この幸福感を求めて甘いものを日常的に食べてしまうことがあります。

このように栄養の観点からもアプローチを患者さんにすることができます。

甘いものだけじゃない!食べるものや栄養素は、こんな口腔内のトラブルとも関連が?

甘いものだけでなく、歯茎の出血、口内炎、かみしめや歯ぎしりなども栄養が大きく関係しています。

・口内炎

ビタミンBの不足で口内炎ができやすくなったり、治りにくくなったりします。

不足の原因としては、ビタミンBを含む食品の摂取の不足と、ビタミンBは糖質の代謝にも使用されるため、糖質の過剰摂取によるビタミンBの不足があります。

・歯茎の出血

歯茎は主にコラーゲンでできています。

コラーゲンを作るのに重要な栄養素は、たんぱく質、鉄、ビタミンCです。

これらの材料が不足すると歯茎は弱くなり出血しやすくなります。

また、血糖値スパイクによって細胞が糖化すると、血管が弱くなり歯茎から出血しやすくなってしまします。

・治療中、メンテナンス中の痛み

血糖値スパイクにより糖化がおこると炎症が起こります。

炎症が起こっているので痛みを感じやすくなります。

・歯ブラシのしやすさ

甘いものや油が多いもの、加工されているものは口腔内でベタベタします。

どんなに一生懸命に磨いたとしても汚れが落ちにくくなってしまいます。

・かみしめや歯ぎしり

血糖値が急激に下がることによって危機を感じた身体がアドレナリンなどの血糖値を上げるホルモンを出します。それによって、身体が緊張状態になりかみしめや歯ぎしりが起こります。

しっかり栄養を摂ることの重要性を伝えていきたい

栄養相談ではたんぱく質やビタミン・ミネラルをどのように食べるのかどのくらい摂取するのかも、患者さんとお話をしながら決めています。

また、食事だけでは十分な量を食べることができない場合は医療機関専用のサプリメントを提案させていただいくこともあります。

私は栄養士として栄養面からのアプローチで、病気にならないように予防をしていきたいと考えていました。

口腔内の健康が栄養と繋がっていること、比較的健康なうちから定期的に通う歯科では予防的に患者さんに関わることができるということを学び、歯科医院で管理栄養士として働こうと決めました。 

口腔内は唯一直接目で見ることのできる内臓です。

そのため、写真などで確認しやすく、患者さん自身も変化がとても分かりやすいです。

私は、歯科医院でも栄養相談は必須だと思っています。

ぜひ、みなさんも口腔ケアを考える際には、きちんと栄養が摂れているか考えてみてください。

困ったことがあれば、栄養相談をやっている歯科医院にご相談くださいね。

[執筆者]

古澤安奈

管理栄養士・健康運動指導士

未経験で歯科に入社し、試行錯誤しながら歯科医院に栄養を取り入れてきました。

口腔内の健康は全身の健康と繋がると考え、歯科の観点からの栄養を日々患者さんや他院に向けても発信中です。

歯科医師向け情報サイトWHITE CROSS(ホワイトクロス)の『栄養士から自立型スタッフへ』というセミナーにて出演しています。

予防に力を入れていることと学ぶ環境があるというメッセージに惹かれ、わたなべ歯科にて勤務中。

わたなべ歯科

https://www.watanabeshika.net/

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キレイ研究室
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「今よりもっと、これからもずっときれいでいるために。」をコンセプトに、化粧品開発、ヘルスケア、ネイリストなどさまざまなジャンルの専門家が、中立の立場から「キレイ」についてのコラムを発信しています。
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