斎藤知事めぐり相次ぐ告発 N国・立花党首は弁護士らを「虚偽告訴」と告発 主張が認められる可能性は?

斎藤知事めぐり相次ぐ告発 N国・立花党首は弁護士らを「虚偽告訴」と告発 主張が認められる可能性は?

●斎藤氏やPR会社社長が不起訴や無罪となった場合

では、その告訴に従って捜査が進められたが、結局不起訴や無罪となった場合には、虚偽告訴罪は成立するのでしょうか?

先に書いたように、告訴・告発した犯罪が有罪か否かと、虚偽告訴罪が成立するか否かとに直接の関係はありませんが、たとえば告発対象となった犯罪が無罪となった場合に、翻って告訴・告発した事実が虚偽だったのではないか、と考える余地は出てくるでしょう。

ただし、その場合でも、だからといって当然に、「最初から虚偽の告発をしていたのだ」ということになるわけではありません。

また、犯罪の成立には「故意」が必要であり、郷原弁護士に、虚偽告訴の故意がなければ、犯罪は成立しません。

虚偽告訴罪の故意は、申告した事実が虚偽であることを、告訴・告発時に認識していた場合に認められます。

本件でいえば、郷原弁護士が、告発の段階で、斎藤氏やPR会社社長が公職選挙法に違反しない事実を認識していたことが認定された場合に、故意が認められます。

なお、この故意は、未必的な故意でも足りるとするのが判例です(最高裁昭和28年1月23日判決)。

そこで、「公職選挙法違反にはあたらない」事実を確定的に認識しながら告発した場合だけでなく、「公職選挙法違反ではないかもしれないが、それでもかまわない」と考えて告発した場合も、本罪の故意は認められうることになります。

故意があるかどうかの具体的な判断は、本人(郷原弁護士)の言葉だけでなく、客観的な状況、たとえば、告発段階でどの程度の資料を有しており、告発という判断に至ったのか等の点も考慮してなされます。

上に挙げた昭和28年判例でも、噂話の真偽について何らの調査もしていない、等の事情から、虚偽告訴罪(※当時の呼び方では誣告(ぶこく)罪)の故意を認めているのであって、告訴・告発にあたって客観的な調査を十分に尽くしている場合には、虚偽告訴罪の故意は否定されると考えられます。

本件では、立花氏の動画では、証拠がかなり薄いという立花氏自身のコメントもあるのですが、元検察官で弁護士である郷原弁護士が両者を告発するにあたって、十分な調査をしていないとは考えにくいため、斎藤氏やPR会社社長が公職選挙法違反となるかどうかはともかくとして、郷原弁護士の告発につき、虚偽告訴罪が成立する可能性はかなり低いと思われます。

●立花氏に、郷原弁護士を告発したことに対する虚偽告訴罪は成立しないのか

逆に、立花氏が郷原弁護士を虚偽告訴罪で告発したことも、虚偽告訴罪になるかどうかも問題にはなり得ます。

しかし、立花氏はこれまで斎藤氏に関連する情報を相当収集していると思われ、郷原弁護士による公職選挙法違反の告発の証拠関係が非常に薄いという主張をしているわけです。

したがって、立花氏に虚偽告訴罪の故意が認められる可能性は低いと思われます。

【追記】 12月4日16時55分 記事を一部、加筆しました。

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