日本でも過去と比べると、M字のへこみは解消しています。未婚化の進行で、もともと就業率の高い独身女性が増えていること、そして、結婚後も働き続ける女性が増えていることが影響しています。今の女性は結婚をしても仕事を辞めません。けれど、出産後は6割が仕事を辞めています。
その背景には、女性の雇用形態の問題があります。25~34歳の女性の約4割は、契約社員やパートなどの非正規雇用者として働いています。非正規雇用では育休が取りにくく、いったん辞めざるを得ないケースが多いようです(※1)。
従来、法律上では非正規雇用であっても、これらの条件を満たせば、育休を取ることができます 。
(1) 同一の事業主に1年以上雇用されていること
(2) 子の1歳の誕生日以降も引き続き雇用されることが見込まれること
(1)は過去の事実であり簡単に証明できますが、(2)は人材に余裕のない中小・零細企業などでは、確約することが難しいのではないでしょうか。
ちなみに、雇用形態別に出産後も働き続けている割合をみると、正規雇用者では約5割、非正規雇用者では約2割となっています(※2) 。これらの割合は、正規雇用者では近年、じわじわと上昇していますが、非正規雇用者では1980年代から変わっていません。
最近、日本経済は活性化しつつありますが、長らく続く景気低迷の中、特に若い世代で非正規雇用者が増えてきました。結婚後も働く女性が増えていますが、育休を取りにくい非正規雇用者が多いために、結局、出産で仕事を辞める女性が多いのです。政府は、このような現状を踏まえ、安定した雇用のもとで仕事と育児を両立しやすい、「限定正社員」の普及拡大を進めています。
「限定正社員」とは、仕事内容や勤務地、勤務時間が限定された正社員のこと。一般的な正社員は、異動による仕事内容の変更や転勤、残業などを受け入れなくてはなりません。しかし、「限定正社員」では、仕事内容などを限定することで、自分の希望にあった働き方をしやすくなります。
「限定正社員」は、これまでも一部の企業では取り入れられていましたが、位置づけや仕事内容が明らかになっていないことも多く、導入が進んでいませんでした。例えば、事業撤退により工場や事務所を閉鎖するような場合も、企業側にとっては「解雇回避義務」があるため、正社員にするとクビにしにくいのではないか、という懸念がありました。
そこで、厚生労働省は、今年7月に有識者を集めて、企業が「限定正社員」を導入する際の具体的な指針を取りまとめました。限定内容の明示や処遇水準、正社員との転換制度、事業所閉鎖時の対応などが示されています。
子どもが小さいうちは「限定正社員」、子育てが落ち着いたら「正社員」に戻るなど、ライフステージにあわせて、働き方を選べるような仕組みが普及するといいですね。