イライラして、つい子どもにあたってしまった…と後悔しているママ・パパたちへ。イライラ撃退法を教育の専門家が伝授

イライラして、つい子どもにあたってしまった…と後悔しているママ・パパたちへ。イライラ撃退法を教育の専門家が伝授

子育て中はやるべきことが多くて、ついイライラしてしまう日もあるのではないでしょうか。そんな気持ちのまま、子どもと接するとつい我が子にきつくあたってしまう場面も。
そこで、「言い方ひとつ・やり方ひとつで子育ては、もっと楽になるし、楽しくなる」と発信している教育評論家の親野智可等さんに、育児中のイライラ撃退法についてお聞きしました。

いろいろなことが重なってイライラしてしまった時は…

「たまひよ」アプリユーザーに、子どもについ言ってしまった「後悔している言葉」があるかどうか聞いたところ、多くの体験談が集まりました。その一部をご紹介しましょう。

「『しつこい』。抱っこしておろしての繰り返しで、つい言ってしまいました」(さき)

「泣き止まない時に一度だけ『うるさい』と言ってしまった」(ちまる)

「イライラしていて、『嫌い』と言ってしまったこと」(あい)

「『なんでできないの!』とか『ダメって言ってるでしょ!』と大きい声で言ってしまったことです。その時は自分も不安定で、そうすれば気持ちが伝わると思ってしまっていたような気がします」(ひよこ)

イライラしていたり、育児中で手いっぱいになっている時につい、きつい言葉が出てしまうようですね。
そういう時は、まず親自身が「今、自分はイライラしている」と気づくことが大事と話す、教育評論家の親野智可等さんに聞きました。

「生活の中でイラッとすることは誰しもあることですが、そのイラッとした時に、『私、今イラッとした』とその状況に気づくことがとても大事です。

もう1人の自分が自分を俯瞰して見ているようなイメージですね。『私、今キレそうだな』『今イラッとしたな』と気がつくと、イライラに飲み込まれなくてすみます。逆に気づかないと、イラッとしたまま、子どもに『ダメでしょう』とか『なんで?』と言ってしまいがちなのです。

イラッとしたと気づくことができたら、次にやってほしい私のイチ推しは深呼吸です。胸いっぱいに空気を吸って、ゆっくりと吐き出して呼吸を整えると、徐々にイライラは落ち着きます。
これは怒りへの対処術、いわゆるアンガーマネジメントの中の、簡単にできる効果的な方法です。

そのほかにも以下のような方法があります。
・怒りを感じた時に6秒数える(人間の怒りの持続は長くても6秒と言われるため)
・その場から離れる
・無理矢理、口角を上げて笑顔になってみる
・自分で『大丈夫、大丈夫』と言い聞かせる

これらのアンガーマネジメントについては、インターネットで調べれば、多くの方法が紹介されているので、自分に合う方法を見つけるといいでしょう。

そのほかにおすすめなのは、日頃からイライラやストレスを純粋に発散させておくという方法です。
たとえば、『ママね、今日嫌なことがあってイライラしてるの。あなたのせいじゃないけどね。だから犬語のケンカに付き合って』と子どもに頼みます。そして、子どもと向きあって『ワンワンワン!』と犬語でケンカするのです。1分もやると溜め込んだストレスがけっこう発散できますよ。

この発散法、実はもう一つ大きな効果があります。
大笑いしたりはしゃいだりしているとき、脳の扁桃体が活性化されています。その後、静かになるときは、脳の前頭前野が扁桃体にブレーキをかけます。この繰り返しで前頭前野が扁桃体にブレーキをかける力がつきます。扁桃体は情動や感情を司る部位なので、イラッとしたときも扁桃体が活性化されます。日頃から、よくはしゃいだり大笑いしたりしている子は前頭前野がブレーキをかける力がついているので、イラッとしたときもキレたりしなくなります」(親野智可等さん)

不要な焦りが安心に変わる?子どもの成長の特性を知っておこう

「もう1つ、今後の子育ての悩みを少し軽くできるかもしれない、子どもの成長特性についてもお伝えしましょう。

脳の構造には男女で違いがあり、それは以前、男の子脳と女の子脳と言われていました。このネーミングがジェンダー差別の観点から問題視する人がいて、私は現在、それを晩熟脳・早熟脳と言い換えています。

男の子は晩熟脳を搭載していることが多く、女の子は早熟脳を搭載している可能性が高い。ただこれには例外があって、女の子の中に晩熟脳の子もいるし、男の子の中に早熟脳の子もいます。

ちなみにそれぞれの特長を説明してみましょう。
早熟脳は自己管理能力が小さいうちから高いので、物の管理や整理整頓、片付け、身支度などもできるようになるのが早いです。時間の観念がしっかりしているし、切り替えも早い。そして嫌だけど、やらなければならないこともやろうとします。

一方、晩熟脳の子はすべて反対で、嫌なことは後回しで、自分のやりたいことだけをやりたがります。時間の観念はないし、切り替えもなかなかできない、いわゆる『この子は手がかかるなぁ』と感じるのは、晩熟脳の子なんです。
でも、『うちの子は晩熟脳だからダメだ』などと思う必要はなくて、長所と短所はコインの裏表。自己管理力がない子=やりたいことをやる子なので、独創性やクリエイティビティーに優れています。時間の観念がないという特性は、いつまでも好きなことをやっていられるという集中力につながります。
こうした晩熟脳の長所は、成長するにつれ花開き、後伸びしていきます。

だから、今手がかかるのは脳の特性によるものであり、その子がサボっているわけではないのです。いずれグンと伸びる時期がくるので、今はひたすら親子関係をよくして自己肯定感を持てるようにしてあげることが大切です。

話が少々脱線しましたが、親がキレる原因は、子どもではなく、親の忙しさにもあるのではないかと私は考えています。
特に日本のママはやることが多すぎ。だから、やることの優先順位をつけて、それほど必要でないものはどんどんと手を抜いていきましょう。

子育て家庭の優先順位の上位は、まぎれもなく親子関係ではないでしょうか。そこがよければ、洗濯物を畳んでなかったり掃除が行き届いていなかったりしてもいいと、 私は思っています。
親も子も笑顔でいられるーーそんな家庭がいいですよね。

笑顔を増やすためには親子で写っている写真を玄関やリビングなどに貼って、日頃から見るようにするのはオススメです。また口角を思い切り上げて、スマイルしてみるのも効果的。こうして笑顔になることでで幸せホルモンが分泌されるようになり、実際に明るく楽しい気持ちになれるといいます。

少しずつイライラを撃退して、時には自分なりのストレス発散もして、笑顔あふれる家庭を築いてほしいと思います」(親野智可等さん)

イライラした自分に気づき、たかぶった気持ちをしずめる方法を知る。それだけでも一歩前進しそうです。2人の男の子を育てた母としては、晩熟脳の話も腑に落ちました。成長の仕方に違いがあるのなら、将来を楽しみにしつつ今、目の前の我が子に寄り添っていくことが、親ができる数少ないことなのかもしれません。
(取材・文/橋本真理子、たまひよONLINE編集部)

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