鎌倉の人気カフェ、市長に「不法占拠扱いされた」 2000万円と謝罪広告求め提訴

鎌倉の人気カフェ、市長に「不法占拠扱いされた」 2000万円と謝罪広告求め提訴

神奈川県鎌倉市にあるカフェオーナーが12月5日、鎌倉市長の松尾崇氏が同カフェを念頭に「戦後のどさくさにまぎれて続いてきた施設」などの発言をしたことで、自身の名誉が傷ついたなどとして、計2000万円の損害賠償請求と謝罪広告を求めて東京地裁に提訴した。

原告となったのは、鎌倉市坂ノ下にある「ヴィーナスカフェ」の運営会社と経営者でカフェオーナーの吉澤治郎さん。松尾氏による発言が会社の信用を毀損し、経営者の名誉を毀損したとして、それぞれに1000万円の損害が生じたと訴えている。

●週刊誌報道での発言が「名誉毀損」「信用毀損」と問題視

原告側によると、松尾氏は、ヴィーナスカフェに関する週刊新潮の取材を自宅前で私的に応じ、「鎌倉には戦後のどさくさにまぎれて続いてきた施設があり、あの一帯もそう」などと述べた。この発言は、週刊新潮2023年4月6日号に掲載され、同誌のウェブサイト・デイリー新潮にも掲載された。

さらに松尾氏は、出席した市委員会の答弁で、取材での発言内容を問う質問に対し、「基本的にはヴィーナスというところをイメージとしては使ったと記憶しております」と明言したという。

松尾氏の取材に対する発言は、ヴィーナスカフェが不法に公有地を占拠して営業しているとの趣旨だとし、経営者の吉澤さんが「不法占拠した闇屋の類、不逞の輩の類の末裔かのような印象を与える」として、原告側は吉澤さんへの名誉毀損だと主張。

また、湘南鎌倉の伝統ある海が見えるおしゃれなカフェという長年にわたり築いてきたイメージと信用、ひいては顧客吸引力が著しく毀損されたと訴える。

計2000万円の損害賠償請求のほか、発言による名誉毀損と風評被害は全国的に拡散しており、回復するためには謝罪広告が不可欠だとして、全国紙などへの掲載を求めている。

●「不法占有者呼ばわりで眠れなくなった」

ヴィーナスカフェは鎌倉の海岸沿いにある1955年創業の老舗カフェレストランで、映画やドラマのロケ地としても知られる人気店だ。サザンオールスターズの桑田佳祐さんが監督を務めた映画「稲村ジェーン」にも登場した。

原告側によると、ヴィーナスカフェは1955年頃、鎌倉市の要請を受けてレストハウスとして個人の私費で建築されたもので、市に対しては土地使用料を滞りなく支払っており、市側も受領してきたという。

吉澤さんは、提訴後に開かれた記者会見で、「どさくさ紛れの不法占有者というレッテルを貼られてしまって、カフェにとって大事なイメージがダウンしてしまった」と苦しい状況であることを訴えた。

「だいぶ苦労して経営を頑張っている状況です。不法占有者呼ばわりされ、社長としても憤懣やるかたない。眠れなくなり、病院で薬をもらわなきゃならないような状態まで追い詰められました」(吉澤さん)

カフェの営業は現在も続けているが、イメージダウンの影響は「営業面で出ているかもしれない。スタッフ確保にも苦労している」(吉澤さん)という。

原告代理人の金井重彦弁護士によると、松尾氏が私的に自宅前で取材に応じて発言したことが問題の発端だとして同氏個人を訴えたといい、鎌倉市は被告となっていない。

また、松尾氏の発言を掲載した新潮側については、「こちらの言い分も報道するなど、フェアに取材してくれた」(金井弁護士)として、現時点では新潮側を訴える予定はないという。

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