ポルトの橋と本屋さん|益田ミリ

ポルトの橋と本屋さん|益田ミリ

ポルトガル第二の都市ポルト。

 

ドウロ川に架かる巨大な橋、ドン・ルイス1世橋を川沿いから見上げてみれば、

「よく、まぁ、こんな大きなものを……」

素直に感心してしまう。

当時のポルトガル王から名づけらたドン・ルイス1世橋が完成したのは1886年。高さ約45メートルと資料にはあるが、実際はその倍くらい大きく見える。設計したのはエッフェル塔を設計したギュスターヴ・エッフェルの弟子で、なるほどエッフェル塔のアーチの部分にとても似ていた。

坂の多いポルトの街。観光は主に歴史地区とよばれるエリアで、ドウロ川を挟んだ向こう岸はポートワインのワインセラーが集まっており、ワインセラー見学や試飲ができるところもあるらしい。ワインセラーには寄らなかったが、繁華街の土産物店でミニボトルを買ってホテルで試したポートワインはびっくりするくらい甘く、デザートのようだった。

ドン・ルイス1世橋は徒歩で渡ることもできるので、小さなケーブルカーで小高い丘をのぼり、橋の近くまで。考えることはみな同じ。坂道を歩きたくない観光客でケーブルカーは満員だった。

約45メートルの高さの橋には電車も走っている。電車が来たときだけ端に避ければいいという感じで、観光客たちは広がってのびのび歩いていた。

橋の上からポルトの街が遠くまで見渡せる。坂に沿ってぎゅうぎゅうに詰まっている歴史地区の建物はそろいのオレンジ色の屋根。日が暮れた後に夜景も見に来たけれど、ドン・ルイス1世橋は橋の上からの景色より、麓から橋そのものを眺めるのがいい。ちなみに橋は二重構造で、下の橋は車と人が往来できる。

季節は秋。

初めてのポルトガル。ヨーロッパの遥か西の国。わたしはポルトガルをよく知らなかった。

なんか、おいしいものがありそうやな?

というイメージだけでやってきて、

旅をしながら少しずつポルトガルを知っていけばええかな?

などと、のほほんとしていられるのはパックツアーだからであった。

さて、ポルトの街には有名な老舗の本屋さんがあるらしい。イギリスの新聞ガーディアン紙が「世界で最も美しい書店10選」に選んだ書店のひとつがポルトの「レロ書店」。今では観光名所になっていて、店の前には入店の予約時間を待つ人のためのレーンまで用意されていた。

ツアーにはあらかじめレロ書店の予約&見学が組み込まれていたので、待ち時間もなく店内でしばし自由時間。

一番の映えスポットになっているのが中央にある階段である。魔法にかけられた木が左右に分かれて天へ伸びていくような生命力溢れるデザイン。美しさと怖さが入り交じった圧倒的な存在感!『ポルトガル名建築さんぽ』(著・矢野有貴見)によると、「ネオ・ゴシックとアール・ヌーヴォー様式の混じりあった折衷スタイルで設計されました」とのこと。

店は一階と二階。吹き抜けになっており、天井は巨大なステンドグラスだし、本が並ぶ棚や照明器具も趣があるし、わたしもだけど観光客(本を買いにくるだけの人はたぶんいない)は写真を撮るために、もう必死。ちなみに、支払っている入場料は書籍代として使うことができるので、わたしは英語版の『星の王子様』を記念に。

作家のJ・K・ローリングが英語教師をしながらポルトの街で執筆したのが『ハリーポッターと賢者の石』で、物語にはポルトの風景が登場していると言われる。ここ「レロ書店」もハリポタ的な雰囲気があるけれど、『地球の歩き方 ポルトガル』のコラムには「本人は一度も行ったことがないと否定している」とあった。

つづく

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