冬になると、気になるのが風邪になったり体が冷えたりして体調が不安定になること。
実は、私たちの体調を考える上で、自律神経のバランスを整えることはとても大切なのです。
今回は、保健師の本田和樹さまにお話を伺いました。
よく目にするけど、意外と知らない・・・自律神経っていったいどういうもの?
最近寒くなってきましたが、「季節の変わり目は自律神経のバランスが乱れやすい」と耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
今回はこの自律神経について勉強していきましょう。
そもそも自律神経とはなんなのでしょうか。
簡単に説明すると、「自律神経」とは、自分の身体を最適な状態に保つために内臓の働きや体温調節といった全身の機能をコントロールする神経のこと。
この自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分けられます。
・交感神経:身体を緊張させる。活動時に働く
例:運動時には心拍数が増え、血管が収縮し、血圧が上がる
・副交感神経:身体をリラックスさせる。休息時や安静時に働く
例:家でくつろいでいるときには、心拍数が減り、血管が緩み、血圧も下がる
自律神経は時間によって働きが変化する特徴があります。
例えば、日中の仕事や学校に行く活動的な時間は、交換神経が優位に、夜間の休息や睡眠に向かう時間帯は副交感神経が優位に働きます。
しかし、夜更かしや寝坊をしたり、食事の時間が不規則であったり、過度なストレス環境下に置かれると、この自律神経のバランスが乱れ身体に様々な不調が出現します。
それは時に落ち込みや不安などの精神的な症状を伴うこともあります。
自律神経と身体の関係について、ご紹介していきます。
自律神経と腸の関係
消化管には内容物を移動させる働きがあり、これを「蠕動運動」といいます。
交感神経が優位な時は蠕動運動が停滞し、副交感神経が優位な時は蠕動運動が活発になります。
つまり、元気に体を動かすときは腸の動きはゆっくりとなり、反対に体を休めている間は腸の動きは活発になるのです。
脳と腸は自律神経やホルモンを介して密接に関わっており、脳の精神的ストレスと腸の不調は相互に影響を及ぼしあっているのです。
では、腸の働きが低下するとどうなるのでしょうか?
・下痢や便秘:ストレスを受けると自律神経のバランスが乱れ、蠕動運動に異常をきたすことにより、下痢や便秘ぎみになります。
・免疫力の低下:腸内環境が悪くなると腸内の免疫細胞に影響を及ぼし、風邪や病気にかかりやすくなります。
・肌荒れや肥満:腸内環境が悪化し腸からの栄養素の吸収率が悪くなると、肌荒れや代謝悪化により肥満の原因となる可能性があります。
自律神経の働きを整えることは、腸にとっても重要なのです。
自律神経と気候の関係
人によっては雨が降ると頭が重くなったり、季節の変わり目に体調を崩したりする方も少なくないのではないでしょうか。
今年の秋は特に寒暖差が激しい日が続きましたが、寒暖差が激しいと自律神経の働きが必要以上に活発になります。
それにより、過剰にエネルギーを消費することになり、疲労が蓄積してしまうのです。
この身体の疲労は「寒暖差疲労」ともいわれています。
これにより、頭痛や肩こり、めまいや食欲不振等の身体的な不調の他に、イライラ、不安、落ち込み等の精神的な不調も出やすくなります。
自律神経と睡眠の関係
自律神経が乱れると、休息や睡眠で副交感神経が有意になるはずの夜間になっても交感神経が活発な状態が続きます。
その結果、就寝時刻になっても、心と体の緊張状態が続き睡眠障害が出現します。
具体的には、寝つきが悪い、途中で目が覚める、眠りが浅い、熟眠感が得られない…等があります。
上手く睡眠をとることができないと、日中の眠気や疲労感に繋がるのです。
また、このような状態が長く続くと精神面にも影響が出るため、うつ病などの精神疾患を引き起こす可能性もあります。
自律神経を整えるために重要なポイント
私たちの健康に大きくかかわる自律神経。
続いて、整えるための4つのポイントについてお話ししたいと思います。
1:食事
1日3食規則正しく食事を摂取することで、生活リズムが整い、自律神経のバランスを保つことに繋がります。
特に夕食は睡眠の2~3時間前には済ませるようにしましょう。
ただし、「必ず〇時に食事を摂らなくては!」と意識しすぎると、それがかえってプレッシャーやストレスとなり自律神経の乱れに繋がってしまうことも。
ストレスにならない程度に決まった時間に食事を摂ることを意識してみましょう。
2:運動
週2~3回、1回30分以上の運動習慣を、無理せず自分のペースで取り入れましょう。
筋トレやランニング等の激しい運動ではなく、ウォーキング等の有酸素運動を取り入れることをお勧めします。
ウォーキング以外にも、エスカレーターやエレベーターを使用せず階段を積極的に使用する、電車では座らず姿勢よく立ってみる等、日常生活での工夫も意外と運動になるため、できることから日常生活に取り入れてみましょう。
3:睡眠
1日6~7時間以上の睡眠をとるように意識しましょう。
スマホやパソコンを見ることはブルーライトの影響から、睡眠の妨げになってしまう可能性が考えられるため、寝る前には見ないようにすることをおすすめします。
また、ぬるめの湯船に15~20分ほど浸かることも速やかな睡眠導入に繋がります。
暑すぎる・寒すぎるなども睡眠には影響します。
疲れを癒し、快く明日を迎えるためにも、環境を整え、快眠を意識しましょう。
4:休息
心身をしっかりと休ませることは重要ですが、人によってリラックスできる方法は異なります。
自分に合ったリラックス方法を見つけてみましょう。
香りも自律神経に作用します。
アロマやハーブティー等、生活の中に香りを取り入れてみてはいかがでしょうか。
また、リラックスできる音楽を聴く、ストレッチや瞑想をする…等、ぜひお試しください。
おわりに
自律神経は心と体の健康に大きく関わってきます。
生活習慣の見直しや自分に合ったリラックス方法を見つけ、自律神経のバランスを整えながら心身共に健康な生活を送り、この冬を乗り越えましょう。
執筆者
本田和樹
株式会社エムステージ産業保健事業部
保健師業務マネージャー
看護師として急性期精神病院で5年間勤務したのち、2020年エムステージ入社。
産業保健師の業務委託事業立ち上げに携わり、現在は複数の企業で保健師として実務をおこなう。
労働と精神衛生についての啓蒙活動、寄稿などもおこなっている。
取得資格:保健師、看護師、養護教諭一種、第一種衛生管理者等
株式会社エムステージ『産業保健トータルサポート』
https://sangyohokensupport.jp/
配信: キレイ研究室
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