「ラーメン二郎の顧問弁護士」という仕事 「儲からないフランチャイズ」「インスパイアに勝訴」成功支えた"黒子"の告白

「ラーメン二郎の顧問弁護士」という仕事 「儲からないフランチャイズ」「インスパイアに勝訴」成功支えた"黒子"の告白

●店主に幸せになってほしいから「めちゃくちゃ破格」な加盟料・ロイヤリティー

現在、ラーメン二郎グループの加盟店は、分割払いも可能な「加盟登録料」と、毎月のロイヤリティー(固定)を三田本店に支払う形になっている。

いずれもここで具体的な金額は出せないが、通常のフランチャイズと比較して、「めちゃくちゃ(破格)です」。

「ラーメン二郎で働く人の中には、幼い頃から家族の働き手を担うなどの苦労人が少なくありません。お客さんに喜んでもらうだけではなく、店主にも世間並みかそれ以上の幸せになってほしい。親父さんの考えが反映されています」

そのかわり、店主として独立するためには、三田本店で半年から1年ほどの修行が必要となる。麺、スープ、豚(チャーシュー)を作る工程を経験し、山田さんや幹男さんの働く姿に接しながら、客に喜んでもらうことを学んでいくという。

比較対象として相応しいかは別として、飲食チェーンの中には、2週間ほどの研修を受けた店長が、各地の店舗に配属されてオペレーションに当たることもある。そうしたスタイルではないわけだ。

「修行を受けて店主になろうとする方はこの法律事務所で開業のための面接を受けます。修行に脱落したり、面接で落ちて、お店を開くに至らなかった方は10名ほど。今の店主たちに言わせると、この面接が一番きついようです」

●法的バックアップの中身

精神的な主柱(山田さん)と実務担当(幹男さん)の法的なバックアップが弁護士の役割だ。仕事は多岐にわたる。

開業における賃貸借契約のチェックもその一つだ。訴訟になることもある。

「親父さんと息子さんが視察してOKが出た店舗を私が確認します。ラーメン二郎の知名度が全国的になったこともあり、賃料を過剰に高く取ろうとしてくる場合もあります。

立ち退きの問題など訴訟になった案件もあります。話し合いによる解決を目指しますが、難しければ裁判で主張すべきことを主張していきます。その関係で負けたことはありません」

また、客とのトラブルなどをめぐり、加盟店から個別の法律相談にも応じている。

店内で動画撮影のトラブルも目立つようになり、店舗によっては警告の張り紙を出すような対応もしている。

グループでは年に1回の「店主会議」の場で、店主の面談も実施。

「店舗の数が増えていくと、1人の勝手な行動が他の店主に影響を与えていきます。そうならないように、危ない店主がいれば、ここは考え直したほうがいいよと注意を伝えます」

二郎人気にあやかりたいと商品化の要望は複数のメーカーから寄せられてきた。法務部とのやりとりは弁護士の仕事になる。

「お客様にご迷惑がかからないかという観点で考えます。我々が品質管理できないことも考えられます。メーカー側に従うだけになってしまうことも考えられます。

ラーメン二郎である。それはつまり、ボリュームがあって、脂があって、安くて美味しい。そのようなラーメンが提供できなくなるのでお断りしています」

海外進出の話も断ってきたという。

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