肺がんは、男女ともに高齢になるにつれてその発生率が高くなり、特に70歳以上で顕著に増加することがわかっています。
肺がんは特有の症状がないため、症状が現れていなくても定期検診で発見されることがあります。それでは、肺がんとはどのような病気なのでしょうか。
今回は、肺がんになりやすい年齢や年齢階級別の罹患率、死亡率などについて解説します。年齢的に肺がんが気になるという方は、ぜひお読みください。
≫「肺がん」を発症すると「背中にどんな痛み」を感じる?初期症状も医師が解説!
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
肺がんとは
肺は呼吸を行うための器官で、左右の胸部に1つずつあり、気管・気管支・肺胞から構成されています。肺がんは、肺の正常な細胞が何らかの原因でがん化したものです。
肺がんで命を落とす方は年間約7万5千人を超え、これはすべてのがんのなかでも決して少ない数値とはいえません。肺がんは進行するにつれて、周囲の組織を破壊しながら増殖する性質があり、リンパ節や反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎などに転移することもあります。そのため、注意が必要です。
肺がんの罹患率は年々増加しており、早期発見のためには定期検診が欠かせません。
非小細胞肺がん
肺がんは、治療の効きやすさや進行速度の違いから、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの2つの組織型に大別されます。非小細胞肺がんは、肺がん全体の約8〜9割を占め、さらに腺がん・扁平上皮がん・大細胞がんなどに分類されます。
このうち、肺がん全体の約5〜6割を占めるのが腺がん、次いで多いのが全体の約3割を占める扁平上皮がんです。
腺がんは末梢部分に生じることが多いとされておりますが、症例により異なります。これに比べて、扁平上皮がんは肺門部に発生しやすく、咳や血痰などの症状が現れやすいかもしれません。
小細胞肺がん
小細胞肺がんは、肺がんの約10〜15%の確率で発症する病気です。転移が速く、部位によって骨転移による疼痛・ホルモンを異常に産生する内分泌異常(クッシング症候群、SIADH)・下腿を中心とした筋力低下(Lambert-Eaton症候群)など、いろいろな症状が現れるでしょう。また、進行が極めて速いため、迅速な診断と早期の治療開始が必要な点にも注意してください。
特徴としては喫煙者の男性に多く見られ、増殖が早く転移しやすく、抗がん剤や放射線に対する感受性が高いことが挙げられます。さらに、肺の入り口である肺門近くに多く発症するため肺門型肺がんとも呼ばれ、血痰が出ることも特徴的です。
肺がんになりやすい年齢
肺がんになりやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか。以下に、肺がんの患者さんが増えやすい年齢や男女差についてまとめました。
肺がんの患者さんが増えてくる年齢
肺がんの罹患数は、男女ともに年齢が上がるほど罹患率が高くなる傾向があります。特に60歳以降になると急激に増加し、70歳以上ではその増加が顕著です。
男性の場合、40歳以上では胃がん・大腸がん・肝臓がんなどの消化器系がんが約5〜6割を占めますが、70歳以上になると肺がんと前立腺がんの割合が大きくなります。女性の場合は、50歳代から肺がんと消化器系のがんが増え始めます。
男女差
国立がん研究センターの統計によると、2019年度の肺がんの罹患数は126,548例で、全がんのなかで3番目に多いことが報告されています。そのうち、男性は84,325例、女性は42,221例と、男性の方が女性の約2倍多いのです。男性の場合、70歳以上で肺がんの罹患率が急増し、80歳以降も増加が続いています。
一方、女性では40歳代で乳がん・子宮がん・卵巣がんなど女性特有のがんが約7割を占めますが、閉経を迎える50歳代を境にその割合が減少します。
配信: Medical DOC