妊娠14週「赤ちゃんの胃が心臓の隣ぐらいにある」と判明。重大な疾患と手さぐりで向き合う日々【先天性横隔膜ヘルニア体験談・医師監修】

妊娠14週「赤ちゃんの胃が心臓の隣ぐらいにある」と判明。重大な疾患と手さぐりで向き合う日々【先天性横隔膜ヘルニア体験談・医師監修】

羊水過多となり、35週4日で出産

――妊娠中はどんな様子でしたか?

寺川 妊娠中、特別気をつけることはありませんでした。重症で一定の基準を満たせば胎児治療という選択肢もありましたが、わが子は該当しませんでした。重症度によって生存率や合併症が違うと聞いていました。妊娠中のエコーでは、重症度を見るために赤ちゃんの肺の大きさを計測します。その結果に一喜一憂し、健診後泣きながら帰ることもありました。

おなかの赤ちゃんが先天性横隔膜ヘルニアだと、妊娠後期に羊水(ようすい)が増えてしまう場合があるそうです。
内臓が上のほうに位置するため胃腸がねじれてしまい、赤ちゃんが羊水をうまく飲みこめないためです。私も羊水が増え、様子を見ていました。すると妊娠35週くらいのときに突然破水してしまったんです。急きょの入院となり4日ほどたったころに陣痛が起き、出産となりました。

――出産の様子を教えてください。

寺川 帝王切開になるかもしれない状態でしたが、自然分娩で生まれました。35週4日で、体重は2296グラムでした。

――最初に赤ちゃんに会ったときはどんな気持ちでしたか?

寺川 生まれてすぐ挿管され、人工呼吸器につながった状態で会わせてもらいました。事前に説明は受けていたので、とにかく無事に生まれてくれてほっとしたのと、思ったより顔色は悪くないように感じて安心しました。出産前「赤ちゃんの状態は生まれてみないとわからない」と言われていたんです。名前は「晴貴」と書いて「はるき」と名づけました。

夜も寝ずに対応してくれた先生や看護師さんのこまやかなケアのおかげで、安定した状態となり、生後2日目に手術を受けることになりました。

――どのような手術でしょうか?

寺川 先ほどもお話したように、この疾患は横隔膜に孔があいていて、胃や腸が胸に入り込んでしまいます。手術はおなかの皮膚を切り、臓器を元の位置に戻すものでした。もし横隔膜の孔が小さければそのまま縫い合わせて閉じます。大きい穴だった場合、きつく結んでもよくないので、人工膜というものを使い、残っている横隔膜と縫い合わせていきます。

晴貴は横隔膜の孔が大きかったので、人工膜を使った手術になりました。おなかの中にいたときの状態から、おそらく人工膜は使うことになるだろうとは言われていました。管につながれた晴貴は、少し動かすだけで血圧が不安定になってしまって・・・。不安と心配で涙がこぼれてしまいました。

「たまには休んでいいんだよ」と声をかけられつつ・・・

――退院後はどのような生活を送りましたか?

寺川 生後2日からPICU(小児集中治療室)、生後18日目からNICU(新生児集中治療室)、生後23日目から外科病棟に約3カ月半入院しました。主治医の先生が毎日病棟に来てくれて、晴貴と私と家族のことを気づかってくれました。私は通常どおり、産後5日目に後ろ髪をひかれる思いで退院しました。

退院後は毎日晴貴に会いに行きました。私の住んでいる自治体は、育休中も保育園が利用できます。だから長男を保育園に預け、15時くらいまで二男のいる大阪母子医療センターに行っていました。

当時はまったく先が見えず、搾乳室やカーテンの中でよく泣いていました。その様子を見て看護師さんが心配し「毎日体調を整えて面会に来てくれるのは、簡単そうで実はすごく大変なこと。晴貴くんのこともだけど、みんなお母さんを心配しているよ。たまには休んでもいいんだよ」と言ってくれたこともあります。

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