登校しぶり、医療的ケア、息子たちのケアで仕事を続けられなくなった夫婦。「居場所を作りたい」フリースクールを立ち上げた父の思い

登校しぶり、医療的ケア、息子たちのケアで仕事を続けられなくなった夫婦。「居場所を作りたい」フリースクールを立ち上げた父の思い

子どもにも保護者にも寄り添う『自然の中で自然でいられるフリースクール』

フリースクールのオープンから約2カ月たった現在、年長から高校生までの7人の子どもたちがフリースクールを利用しています。ふだんどんな学習や活動をしているかを聞きました。

「国語や算数などいわゆる勉強という意味での学習は、ほんの少しだけです。まずは、ここに入ってくれた子どもたちの居場所をつくること。最初ここに来た不登校の子どもたちは、車から出られなかったり、ここに入ること自体に抵抗があったりする子がほとんどだったんです。新しい場所がすごく不安な中で勉強だけを進めていくというのは、なかなかできない。

オリコスでは絵を描いたり、私が読み聞かせをしたり、一緒に料理をしたり…。また、外へ出て散歩してみたり買いものをしたり、木工なんかもやっています。今は子どもたちの興味や関心の幅を広げ、社会参加の意欲を高めようとしている段階。

『自然の中で自然でいられるフリースクール』という言葉を掲げていますが、こういった体験の中から学習を広げていきたいというのが私の中にあります。今後は食育体験やステージイベントなど、不定期ですがフリースクールでイベントも開催していきたいと思っています」(晋也さん)

こうした体験学習をとおして、最初は車から出られなかったり抵抗したりした子どもたちも、今ではとてもリラックスしてフリースクールで過ごしているそう。

保護者にも居場所を

「毎週水曜日はカフェを開いています。どなたでも出入りできるカフェですが、多くはこのフリースクールに入っている子どもたちの保護者が利用しています。不登校の子どもの親たちは、子どもや仕事の悩みを話したくても話せる場所がなかなかない。悩み相談のような堅苦しい感じではなく、保護者の方たちが気軽になんでも話せる居場所を提供できたらと思っています。

まだまだ始まったばかりのフリースクールなので、これからもっとつくり上げていく予定。不登校の子どもたちにとっては、最低限ここに居場所があるって思ってもらえるようにしたい。あとは、やはり保護者に寄り添いたい気持ちが根底にあります。

今の社会は、子どもが不登校になることで親や家庭が社会的に不利になってしまうのが現状です。不登校でも経済的貧困や社会的不利にならない社会にするための活動ができたら。

私たちは医療的ケア児の問題だけでなく、きょうだいが学校に行けなくなって初めて、両親が共働きできるのが当たり前ではないということに気がつきました。

働き方や子育ての制度、地域の問題などいろいろなことが関係するので、すぐにはむずかしいとは思いますが、こういった複合的な家庭の問題にも対応する支援制度があったらとつねづね思います。そんな社会に少しでも近づくよう、これからも自分たちにできる活動を続けていきます」(晋也さん)

お話・写真提供/三村晋也さん 取材・文/安田萌、たまひよONLINE編集部

自身の経験から、フリースクールを立ち上げ、子どもが不登校でも育児と仕事の両立ができる社会をめざして活動を続ける晋也さん。最後に、同じような境遇のお子さんを育てるママやパパに伝えたいことを聞くと、「生まれてきた子どもに障害があったり、医療的ケアが必要になったり、子どもが不登校になったりしたとき、やっぱりショックだしすごく落ち込むと思うんです。もちろんたいへんな日々もあるけれど、今私たちが家族で出かけたり旅行できたりするように、いずれ楽しいこともあるよというのは伝えたい。この先にいつか楽しいことがあると考えるだけでも、すこし気持ちの持ちようが変わるはず」と、話してくれました。

「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。

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