●高校生が東大生に化粧を教える「勉強界隈」
トー横では今年、自殺が多発した。市販薬のオーバードーズの結果、死に至ったケースもある。
「今年はトー横に来ていた子たちの自殺もありました。亡くなった男の子とは交流があり、少年院に入っていたときには手紙のやりとりをしていました。自殺する3日前にも話をしました。
その子は『今は一番幸せだから死ぬ』と言っていました。『わけわからんこと言うな』って言っていたんですが、本当に亡くなった。『何をしていいかわからない』とも言っていた。
彼には『迷ったら、カッコいいか、カッコ悪いかを判断基準にして生きていけ』と言ったことがあります。2週間後、『カッコいい生き方を見つけました。僕はヤクザになります』と。なかなか、こっちの真意が伝わりませんでした」
学習支援として「無料塾」も開いて、天野さんは陰で支える活動をしている。
「東大に『勉強界隈』というグループがあり、そこを支援しています。勉強したかったけど、できなかった子、塾に行きたかったけど行けなかった子がいます。
そこでは、大学生が高校生に、高校生が中学生に勉強を教えています。子どもたち同士で教え合っている。それ自体が面白いです。
また、相互に教え合っています。たとえば、東大生は高校生に勉強を教えますが、高校生は東大生にお化粧の仕方を教えています。今後、いろんな大学に声をかけようと思っています。若者は社会貢献したいという情熱があります」
●支援団体に子どもたちを依存させたくない
「ゆめいく」設立の直前、トー横キッズを連れて、能登半島のボランティアにも行ってきた。地震や津波だけでなく、豪雨でも被災した地域だ。
「もともとつながりのある人の案内で、一人暮らしのおばあさんの家で片付けのボランティアをしたり、仮設住宅で話をしたり、避難所で小学生と遊んだりしました。
能登の現状を見て、子どもたちの感じ方は、予想を上回りました。たとえば、終活中という高齢者がいました。30分ぐらい話していると、ある子が『本当はもっとやりたいことがあるんでしょ?』と聞いたんです、
すると、『やれるんだったら働きたい』と答えました。その子が『やろうと』と返したら、『じゃあ、やる。終活はやめた』と言ったんです。その方は、車椅子だったのですが、なんと立ち上がったんです」
実は「ゆめいく」には、もう一つの意味があると天野さんは言う。
「歌舞伎町から出ていくことを応援したいんです。それが『ゆめいく』の裏テーマです。自分で言うと恥ずかしいのですが、『You made my life』は『あなたが私の人生を大きく変えた』という意味です。
ただし、支援団体に子どもたちを依存させること、たとえば『あそこがあるから来る』ってなっちゃうのは、良くないと思っています。そのためには距離感も大事だし、居心地が良すぎないことも必要かもしれません」
配信: 弁護士ドットコム