2023年総務省の「家計調査」によると、1カ月の消費支出がもっとも多いのは50歳代。節約アドバイザーの丸山晴美さんは「“老後資金は50歳代が貯め時”という常識がくずれつつある」と分析します。では、これから老後の備えをするにはどうしたらいいのか、丸山さんに聞きました。
なお、今回ご紹介する情報はすべて2024年11月時点の取材情報を基にしています。
みなさまこんにちは。節約アドバイザーの丸山晴美です。
お金にはトレンドがあって、その情報をキャッチできるか否かで、得する人と損する人に分かれます。私はみなさまに“お金の旬の情報”を“わかりやすく”お届けしていきたいと思います。今回のテーマは「50歳代の過ごし方」!
人生でもっとも消費支出が多くなるのは50歳代
2人以上の勤労者世帯の1カ月の消費支出(※1)を年代別にまとめた総務省「家計調査」(2023年)によれば、1カ月の消費支出の合計額は、年齢が上がるにつれて上昇し、50歳代がピークで35.32万円だそうです。一方、同調査では支出項目を食料、住居、保険医療など10の項目に分けて算出しているのですが、それらをひとつひとつ見ると、とりたてて支出が大きい項目がないのです。
つまり、50歳代は全項目の支出がまんべんなく多いということが言えます。
※1:消費支出とは、生活を維持するために個人や家族が支出する費用で、いわゆる生活費のこと
65歳以上の無職世帯は毎月3.8万円赤字になる!?
50歳代は他の年代に比べて収入が多くなる時期ですが、総務省「家計調査」を見るとその分出費も多くなることがわかります。その生活レベルのまま年金世代に突入すると、すぐに貯蓄を切りくずすなど、生活が先細りになるケースが少なくありません。
ひと昔前の人生モデルは、女性は25歳ぐらいには結婚して子どももいて、40代半ばになればだいたい子育てが終わりました。なので、その後10〜20年かけて老後の資金を貯めることができたのです。
子育てが終わり老後を迎えるまでの50歳代は「お金がもっとも貯めやすい“第3の貯め時”」と言われていました。
ちなみに、第1の貯め時は独身時代、第2の貯め時は夫婦共働き子どもなしのディンクス時代。公立の小学校に通っているなど教育費があまりかからない時期も、貯め時と言われています。
しかし、現在では結婚も出産も高齢化し、35歳で子どもを産んだ場合、50歳の時に子どもはまだ15歳です。そのような場合は、子どもの教育費と自分たちの老後資金を同時進行で貯める必要があります。
今の50歳代後半〜60歳代は、子どもと自分たち両方にお金がかかる時期に差しかかっているかたが増えていると言えるのです。
さらに、基礎年金部分の受給開始年齢は60歳から65歳に引き上げられ、今後は基礎年金部分の受給開始年齢が70歳まで引き上げられる可能性もないとは言い切れないでしょう。
夫婦ともに65歳以上の無職世帯(夫婦のみの世帯)の場合、実収入から税・社会保険料などを差し引いた可処分所得の平均は、1カ月約21.3万円です。しかし、消費支出の平均は1カ月約25.1万円で、約3.8万円もたりません(※2)。その分はアルバイトなどをして稼ぐか、貯金を切りくずすしかないのが現状です。
だからこそ、50代のうちから支出を抑え、生活全体をコンパクトモードにシフトしていくことが大切なのです。同時に、健康な間はできるだけ長く働く、資産運用で資産を増やすなど、収入を得る方法を見つけておくこともとても大切です。
教えてくれたのは・・・
丸山晴美さん
22歳の時に節約に目覚め、1年で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニ店長などを経て2001年、節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザーなどの資格を取得。身の回りの節約術やライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどを、テレビやラジオ、雑誌、講演などで行なっている。著書は「シングルママの『お金に困らない』本」(徳間書店)、「50代から知っておきたい!年金生活の不安、解消します」(共著)(幻冬舎)、「お金を活かす ハッピーエンディングノート」(東京新聞)「節約家計ノート2024」(東京新聞)steady.特別編集「知識ゼロでもまるっとわかるお金の基本」(宝島社)など多数。
取材・文/かきの木のりみ
構成/サンキュ!編集部
※記事の内容は記載当時の情報であり、現在と異なる場合があります。
配信: サンキュ!
関連記事: