味の素冷食・寺本社長、上期業績は増収減益もキーアカウントや海外で進展、「ギョーザ」は施策が奏功し数量回復

味の素冷食・寺本社長、上期業績は増収減益もキーアカウントや海外で進展、「ギョーザ」は施策が奏功し数量回復

味の素冷凍食品は12月16日、業界専門紙向けに年末記者会見を開き、寺本博之社長らが業績や市場動向などについて話した。2024年度上半期(4~9月)の実績は、売上高が前年比3%増の517億円、事業利益が24%減の32億円と、増収減益だった。

事業分野別売上高は、家庭用は前年並(100%)、業務用は4%減、キーアカウント(=KA、外食チェーンやCVSなど特注品を中心とした領域)は12%増で、日本計は1%増、海外は15%増だった。

寺本社長は「国内売上高を伸ばすことで円安や原料高などのコスト増を吸収する計画だったが、売上高を伸ばしきれなかったことが一番の課題。海外ビジネスでは政情不安等で運賃が高騰していることも(収益に)響いた」と話す。

また、“米騒動“の中で、同社の製品カテゴリーの中では利益率が低い米飯製品で一過性の需要拡大があったことが利益率に影響を及ぼしたという。「安定して需要が高止まれば手の打ちようがあるが、一過性だったため負のインパクトだけを残した」と振り返る。

その中で、寺本社長は「製品カテゴリーごとにブレイクダウンしていくとそれぞれの事業構造はほぼ計画通りで、問題はトップライン(売上高)が上がっていないことだけ」と説明する。そのために「苦し紛れに手を打つことは一切しておらず、伸ばすべき製品カテゴリーのトップラインを引き上げられれば収益は挽回できる構造になっている」と自信を見せる。

売上高12%増と伸長したKAチャネルについては、得意先との協業をベースに新しいチャレンジが進展。フローズン商品をフローズン売場で売るだけでなく、チルド売場、ドライ売場で売る取り組みを進めた。より具体的には、チルド売場ではCVS向けスイーツ、ドライ売場では外食チェーンのレジ横スイーツで商品を展開。「いくつか課題もあるが、それを丁寧に解決し、チルド売場、ドライ売場でフローズン商品を使っていただくという、新しい未来を開いていきたい」と話す。

海外への輸出事業は、シンガポールとニュージーランドでの展開が伸長し、同社が策定している「2030ロードマップ」の目標に向けて順調だという。

また、味の素社のハンドリングで今年1月から展開している冷凍宅配弁当「あえて、」についても触れ「非常に堅調でユーザーがしっかり拡大している。ユーザー獲得のために必要なコストは予算を下回っており、“味の素”というブランドへの信頼が後押ししてくれているのではないかと仮説を持っている」と話す。これまではテスト販売フェーズだったが、「実装フェーズに移行する中で、我々味の素冷凍食品としても中心的な存在としてこのビジネスにかかわっていく」と語る。

家庭用冷凍食品は、「ギョーザ」は販促施策が奏功し、数量を挽回した。米飯は米騒動による需要増で拡大したが、その他の商品が伸び悩んだ。寺本社長は「ギョーザは誰でも失敗なく焼けるというコアのベネフィットを伝えるための“冷凍餃子フライパンチャレンジ”の取り組みが評価され、20ほど各種の賞をいただいた。こうした評価をしっかりユーザー拡大に繋げたい」と述べる。

また、今秋発売の「おべんとPON」について「メディア露出が多く評判になっているが、供給能力の問題で店頭にあまり並べられず、販売量はまだまだ。店頭で(お弁当品に見えないなどの)課題もあり、修正しながら供給体制を整え、時間をかけてもしっかりした事業に育成したい」と話す。

価格面では、各種コストの上昇を受けて来年3月に家庭用・業務用全製品の値上げを実施すると、今年11月末に発表している。寺本社長は「生活者の価格に対する感度が上がっていることは承知の上。今年度の反省も踏まえて価格に反映させていただきながらも、需要喚起策を積極的に展開することで数量へのインパクトを抑えたい」など述べた。

なお、笹崎光也執行役員経営企画部長によれば上期のカテゴリー別概況は、業務用は取り組み強化したホテル向けなどのスイーツは伸長したが、給食の不調などあり減収。KAはスイーツのほか、CVS向け鶏肉製品や餃子が好調で伸長した。海外は中国AFL社で生産している米国向け炒麺(チャオメン)の輸出が拡大し売上が大きく伸びたものの、運賃の大幅上昇で利益貢献はさほど大きくなかったという。

〈冷食日報2024年12月18日付〉

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