妊娠14週で病気がわかったわが子、胃や腸が押し上がって肺が育たない。「1人で悩むまず、支え合える場所を作りたい」【先天性横隔膜ヘルニア体験談・医師監修】

妊娠14週で病気がわかったわが子、胃や腸が押し上がって肺が育たない。「1人で悩むまず、支え合える場所を作りたい」【先天性横隔膜ヘルニア体験談・医師監修】

医師と連携し、家族会を立ち上げることに

――2020年、患者・家族会を立ち上げたとのことです。どのようなきっかけがあったのでしょうか?

寺川 妊娠14週で晴貴が先天性横隔膜ヘルニアだとわかってから、同じ疾患をもつお子さんの出産、子育てのブログをよく読んでいました。大学の小児外科のホームページなどを見て勉強もしましたが、やはり、同じ立場のママ・パパと悩みを共有する場所が欲しかったんです。

たとえば、赤ちゃんのころの晴貴は、ほとんどおっぱいを飲みませんでした。そんなとき、どうしたらいいかはすべて手さぐりでした。同じ疾患がある子や家族が情報交換をしたり、さまざまな悩みに対し共感ができたりする家族会があったらいいなとは考えていたんです。

私は医療従事者でもあるので、2019年に日本小児外科学会が開催されると知りました。そのなかで行われた先天性横隔膜ヘルニアのシンポジウムに参加したところ、日本先天性横隔膜ヘルニア研究グループの医師の1人が「次に先天性横隔膜ヘルニアの診療ガイドラインの改定を行う時には患者や家族の意見を聞きたい」ということを発表の中でおっしゃっておられました。

そこで、スライドに記載されていた連絡先に連絡をしてみました。そこから日本先天性横隔膜ヘルニア研究グループの先生方とのつながりができたんです。私が「家族会があったらいいなと思っています」と話すと「ぜひ立ち上げてください」と応援してくれました。医師の協力もあり2020年5月、7名の初期メンバーとともに「先天性横隔膜ヘルニア患者・家族会」を立ち上げました。

――初期メンバーは、どのように集まったのでしょうか?

寺川 同じ病院に入院していたお子さんのママがインスタグラムで呼びかけてくれたところ、考えに共感してくれた人たちが集まりました。7人から始まった患者・家族会の会員数は2021年5月には32人くらいになりました。2024年10月現在52名の会員がいます。
最初に会員数が増えたのは、研究グループの先生方のおかげでもあります。2020年末から2021年にかけ、研究グループに所属している病院の患者を対象に「先天性横隔膜ヘルニア患者・家族会のことを知っていますか?」と、アンケート調査を実施してくださりました。また、外来診察でリーフレットも置いてくださったんです。そのおかげで一気に周知が広がりました。

悩みを発信すると、すぐに答えてくれる人がいる心強さ

――患者・家族会では具体的にどのような活動をしていますか?

寺川 年に1回、総会を開催しています。会報にも力を入れていて、年に2回会員限定で発行しています。毎回、研究グループの医師のコラムや、家族や当事者の思いなどをつづっています。たとえば、就学に向けてどんなことを行っているかなど、実際に経験したことなどが書かれています。また、オンラインや対面で交流会も開催しています。

――患者・家族会を立ち上げてよかったことはありますか?

寺川 活動するなかですてきな人たちと出会え、日々学ぶことが多いです。会員でLINEのオープンチャットをしているのですが、だれかが相談するとすぐに「うちはこうしたよ」とか「こういう制度が利用できたよ」という返信がすぐに来るんです。さまざまな職種の人がいますし、経験も豊富で、どの回答も親身で心がこもっているんです。皆「自分も困ったから役に立ちたい」と考えているんだと思います。

また、研究グループの先生方のお力添えも大きいです。診察や手術、研究で忙しいにもかかわらず、医療講演会をしてくださったり、時間をさいて横隔膜ヘルニアのことを考えてくださっているんだと実感します。

学会にも積極的に参加しています。2023年、日本小児外科学会の国際シンポジウムで、患者・家族会の立ち上げについて発表しました。2024年4月には世界中から参加者が集まるフランスで先天性横隔膜ヘルニアの国際学会に参加しました。患者・家族会で実施したアンケート調査の発表をしました。その間、子どもたちは夫が家で見てくれました。私の活動を理解してくれる夫に感謝しています。

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