新たな町田啓太スタンダード
今年の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)では、才色兼備の平安貴族・藤原公任を演じている。中期を代表する歌人である公任は、今でたとえるならベストヒット歌謡アルバムみたいな『和漢朗詠集』を編纂したことで知られ、音楽的感性に秀でていた。同作でも竜笛を吹く場面がある。
構えやたたずまいはもちろん、ここでも細部まで心を配り、笛を操る指先に平安の才人の豊かな情感を宿らせていた。漢詩、和歌、管弦に優れた才能(三船の才)をもつ公任をミュージカルに体現している意味では、「ワルツ王」の称号をもつ世界的競技ダンサーと役作りのアプローチは似ているかもしれない。
赤楚衛二との共演ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京、2020年)でBLドラマの金字塔を打ち立てているから、BLマナーはばっちりだろうけれど、原作に描かれた杉木の「にこ」という笑顔をどうアウトプットするのかも気になる。
町田は、これまでのほぼ全作で署名的な爽やかスマイルを見せてきた。この署名性が本作ではどう複雑に表現されるのか。その意味でこれは新たな町田啓太スタンダード作品になるんだろう。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu
配信: 女子SPA!
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