刑事事件の取り調べで黙秘したところ、検察官から「ガキだよねあなたって」などと侮辱的な言葉を投げかけられたとして、元弁護士の江口大和さんが国に損害賠償を求めた裁判の控訴審第1回口頭弁論が12月17日、東京高裁であった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)
●控訴人「黙秘後の取り調べ継続は憲法違反」
江口さんは2018年、犯人隠避教唆の疑いで逮捕・起訴されて、一貫して無罪を主張したが、その後、有罪が確定している。取り調べの際に黙秘したところ、横浜地検の検察官から侮辱的な言葉を投げかけられた。
1審の東京地裁は今年7月、取り調べで黙秘した江口さんに対する横浜地検・川村政史検察官の発言を人格権侵害と認めた一方、黙秘していた江口さんに56時間にわたって取り調べを継続したことは違法ではないと判断し、国に110万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
これに対して、国は控訴しなかったものの、江口さん側は違法と認められるべき検察官の取り調べが他にもあることなどを理由として控訴していた。
江口さんは控訴審で、黙秘権の行使が尊重されている海外の事例などを踏まえ、「黙秘を継続する被疑者に取り調べを継続することは憲法違反である『黙秘権の侵害』にほかならない」と改めて主張した。
●代理人「黙秘権の趣旨に向き合った判断を」
この日の第1回口頭弁論後に東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を開いた江口さんは「控訴審判決には、黙秘権を行使したあとは取り調べは許されないことと、仮に取り調べを継続すること自体は許されるとしても一定の段階からは違法となることの2点について正面から判断をしてほしい」と話した。
代理人の宮村啓太弁護士は次のように訴えた。
「黙秘しているのに延々と取り調べを続けられ、それに耐え切れた人だけが黙秘権を行使できる。今回の事件を担当した検察官の個人的な資質の問題として片付けてはいけない。裁判所には黙秘権の趣旨に正面から向き合った判断をしていただきたい」
配信: 弁護士ドットコム