波紋を呼んだ「生焼けハンバーグ」、店が「保健所から指導受けて販売中止」と発表 客は店の責任問える?

波紋を呼んだ「生焼けハンバーグ」、店が「保健所から指導受けて販売中止」と発表 客は店の責任問える?

東京都武蔵野市にある人気店のハンバーグがSNSで、「生焼けでは?」と指摘されています。これを受け、店は12月10日、「保健所から指導を受け反省し、10日より販売中止した」と店の公式インスタグラムで発表しました。

店側は次のように謝罪しています。

「この度はお騒がせして申し訳ありません。 レアの裏吉祥寺ハンバーグにつきましては、 保健所から指導を受け反省し、10日より販売中止したことをご報告させていただきます」

TikTokに投稿された動画を確認すると、確かにハンバーグを切った際に赤身が多く、火が十分に通っていないようにも見えます。これに対し、「食べたら危険なのでは」といった批判が寄せられていました。

@kogi_jp_gourmet お肉が柔らかくてめちゃ美味しかった。とにかくチーズソースたっぷり、ニンニク醬油ソースたっぷりかけてくれて最高の味が完成。 〓吉祥寺で一番有名なお店。 ハンバーグは柔らかすぎて歯茎で食べられるくらい。 ハンバーグの由来は、ドイツの都市「ハンブルク」に関連しています。ハンブルクは中世の港町で、ヨーロッパとアメリカをつなぐ交易の要所でした。この地で生まれた「ハンブルク風ステーキ」(Hamburg steak)が、ハンバーグの原型とされています。 #ハンバーグ #hamburger ♬ „The Four Seasons” – Winter – part 1 60″ (Vivaldi) – Orchestra of Classical Music

一方で、同店のファンからは、「何度も食べているが、体調を崩したことはない」といった反論もありました。

しかし、厚労省が公開している「お肉の食中毒を避けるにはどうしたらよいの?」というパンフレットには、「ハンバーグを焼く時に注意すべきことは?」として、「多くの病原体は、75度で1分間以上の加熱で死滅するので、中心部まで、火を通すことが重要です」と呼びかけています。

今回、この店では販売中止としましたが、SNS上では定期的に生焼けハンバーグは話題になります。もしも店で提供された「生焼けのハンバーグ」で体調不良が起きた際、治療費などを払ってもらうことは可能なのでしょうか。飲食店の問題に詳しい石崎冬貴弁護士に聞きました。

●「レア状態のハンバーグはかなり危険」

——「生焼けのハンバーグ」を提供することに問題はないのでしょうか。

当然ですが、お店は、お客さんに対して、味付けだけでなく、衛生的にも『食べられる』ものを出す義務があります。肉類は主に表面に食中毒の原因となる菌がついているため、表面をよく焼くことで菌を殺すことができます。

しかしハンバーグは肉をミンチ状にするため、肉の中にまで細菌が入り込むリスクがあります。ハンバーグ専門店の中には、大腸菌など病原菌を混入させないよう衛生管理を徹底している店もあるのでしょうが、生食用食肉の衛生基準を満たしており生のままで食べられる肉であれば別として、一般的には、レア状態のハンバーグは食品衛生上かなり危険です。

——もしも「生焼けハンバーグ」で体調を崩した場合、自ら好んで食べてしまった場合でも、治療費の請求はできますか。

お店には飲食業を行う者として、食品衛生について正しい知識を持ち、管理を行う義務があります。その知識がなかったり、しっかり火が通っているか確認を怠ったりして、レア状態のハンバーグを提供した結果、お客さんに損害を与えた場合、お客さんは生じた損害の賠償を求めることができます。

ただ、ハンバーグを含む肉類の場合、レアかどうかは、色を見ればわかりますから、食べてしまったお客さん側にも過失が認められる可能性があるでしょう。現実の問題としては、本当に、食中毒になった原因がハンバーグか、という点も重要になります。

ただし、客の側が「レアにしてくれ」と言ったとしても、衛生管理を徹底したお店をのぞき、レア状態のハンバーグは明らかに危険です。「腐っていてもよい」と言われたからといって、本当に腐った食品を出してはいけないのと同様、客のリクエストを拒否するべきです。

飲食業を営むお店としては、提供を断る義務がありますから、客からの要望だったとしても、一定の損害賠償義務を負うと考えられます。ただ、その場合は、お客さん側にもかなりの過失が認められることになるでしょう。

【取材協力弁護士】
石崎 冬貴(いしざき・ふゆき)弁護士
東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも焼肉店(新丸子「ホルモンマニア」)を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。
事務所名:法律事務所フードロイヤーズ
事務所URL:https://food-lawyer.net/

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「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。
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