クリスマス会・忘年会・新年会など、イベントが目白押しの年末。
会食・飲み会が増加する時期です。
楽しみにしている人もいれば、どうしても参加したくないという方もいるでしょう。
今回は、会食が苦手な「会食恐怖症」について、大阪カウンセリングセンターBellflower を運営する臨床心理士の町田奈穂さまにお話を伺いました。
会食恐怖症とは
会食恐怖症とは、誰かと一緒に食事をする場面で、強い不安や恐怖を感じてしまう状態を指します。
たとえば、「自分が食べている姿を見られるのが恥ずかしい」「マナーや振る舞いを他人にどう思われるか気になって仕方ない」といった気持ちが強くなるのが特徴です。
医学的には社交不安症の一部と考えられることが多く、特定の恐怖症として扱われる場合もありますが、正式な診断名として認められているわけではありません。
特に日本のように、食事の場を大切なコミュニケーションの場とする文化では、会食恐怖症の悩みを抱える人が多いともいわれています。
私も当てはまるかも・・・会食恐怖症の症状とは?
会食恐怖症になると、人前での食事に対してさまざまな不安や症状が現れることがあります。
たとえば「自分の食べ方を見られている気がする」「失敗したらどうしよう、変に思われるかも」などと考えすぎてしまい、心が落ち着かなくなってしまうのです。
これに伴って、手が震えたり、汗をかいたり、顔が赤くなったりといった身体的な症状が出ることもあります。
また、「喉が詰まるような感じがして食べ物を飲み込みにくい」「胃が重く感じて食欲が湧かない」といった体の反応が出る場合もあります。
このような不安が続くと、会食そのものを避けるようになり、職場の付き合いや友人との集まりに参加できなくなってしまうこともあります。
会食が苦手になる原因は?
会食恐怖症の原因としては、さまざまな要因が考えられます。
過去に会食の場で恥ずかしい経験をしたり、誰かから否定的な評価を受けたりしたことがきっかけになることがあります。
また、幼い頃から厳しくしつけられていて、「ちゃんと食べなさい」とか「マナーを守りなさい」といったプレッシャーを感じ続けたことで、食事中に緊張する癖がついてしまう場合もあります。
さらに、人からの評価に敏感で完璧を求める性格の方は、会食場面でのストレスを強く感じやすいかもしれません。
こうした心理的な原因だけではなく、日本特有の「和を乱してはいけない」という文化的な背景や、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れが関与している場合もあると考えられます。
会食恐怖症かもと思ったら、どうするべき?治療方法はあるの??
会食恐怖症は、適切な治療やサポートを受けることで少しずつ改善が可能です。
治療法として最も効果的とされているのは、認知行動療法です。
たとえば、「自分の食べ方が変だと思われるかもしれない」といった思考パターンを見直し、「みんなそれぞれ食べ方は違って当たり前」といった現実的で優しい考え方に修正していきます。
また、段階的に会食の場面に慣れていく方法も有効です。
たとえば、まずは一人で外食してみたり、親しい友人と少人数で気楽な雰囲気で食事をすることから始め、少しずつ場面を広げていく練習をします。
これに加え、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬を使って不安を和らげることもできます。
ただし、薬物はあくまで補助的な手段であり、根本的な解決のためには心理療法や日常的な取り組みが重要です。
マインドフルネスやリラクゼーション法を取り入れて、不安な気持ちを穏やかにする習慣を持つのも効果的です。
これからの季節、忘年会や新年会など、人と食事をする機会が増える時期がやってきます。
会食恐怖症を抱えている方にとっては、少し気が重くなるかもしれませんね。
でも、無理をする必要はありません。
大切なのは、自分のペースを守りながら少しずつ「安心できる場」を増やしていくことです。
たとえば、気心の知れた友人や家族と一緒に、リラックスできる環境で食事をする時間をつくることは、とても良い第一歩になります。
また、「みんながどう思うか」よりも「自分がどう感じるか」を優先してみてください。
そして、どんな時も「できない自分」を責めないことが大切です。
会食恐怖症は決してあなたの性格が原因ではなく、心と体のバランスの問題です。
もし不安が続く場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談してみるのもおすすめです。
心療内科や臨床心理士、公認心理師といった専門家を頼ってみてください。
[執筆者]
町田奈穂
大阪カウンセリングセンターBellflower 代表
臨床心理士・公認心理師
[プロフィール]
同志社大学大学院在学時より、滋賀医科大学医学部附属病院などで、不眠症やうつ病等の精神疾患の治療に取り組む。
2020年、支援者支援専門のオンラインカウンセリングをおこなう、大阪カウンセリングセンターBellflowerを開設。
支援者支援の必要性の普及活動に加え、不眠症の研究にも取り組んでおり、教育委員会や児童精神科にて発達障害等、様々な育児や教育の相談および情報発信をおこなっている。
CLASSY.など雑誌他webメディアにも監修等記事掲載あり。
大阪カウンセリングセンターBellflower
https://counseling-bellflower.com/
配信: キレイ研究室
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