不登校の小中学生34万人超。でも「復帰させなければ」と躍起になるよりすべきこと。子どもの精神科看護師を取材

不登校の小中学生34万人超。でも「復帰させなければ」と躍起になるよりすべきこと。子どもの精神科看護師を取材

 ある日、子どもが「学校へ行きたくない」と訴えてきたら――。実際の不登校児童生徒数は年々、増加傾向にあります。


 2024年10月31日、文部科学省が公表した「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」が話題となりました。

 学校や教育委員会を対象におこなわれた調査では、2023年度の不登校児童生徒数が前年比約15.8%増の34万6482人という結果に。さらに、「不登校生徒について把握した事実」として「学校生活に対してやる気が出ない等の相談があった」が全体の32.8%、「生活リズムの不調に関する相談があった」が26.7%を占めるなど、不登校の背景に迫る統計も公表しています。

 ただし、学校や教育委員会を対象とした調査で実情を把握できるのか?といった疑問の声もあがっています。そこで今回は、XやYouTubeで子どもたちにまつわる登校を積極的に発信し、児童思春期精神科病棟に在籍する精神科認定看護師として不登校児とリアルに向き合う、「こど看」さん(@kodokanchildpsy)に話を聞きました。

不登校児を病棟で受け入れるケースとは


 うつ病や摂食障害などの精神疾患を抱える子どもたちが入院する児童思春期精神科病棟では「不登校児を受け入れるケースもある」と、こど看さんは話します。

「私の勤務する病院ではまれなケースですが、不登校が長期化し、本人が望む場合は入院になることもあります。保護者の方から『じつは、子どもが学校に通えていない』と相談される場合が多いです。

なかには、お子さんが不登校になったことで仕事をやめようか迷っている保護者の方もいらっしゃいます。ご自宅でお子さんをみる大変さは十分にわかりますし、医療側から『保護者の方も自分の時間を持っていいんです。私たちがお子さんをお預かりしますので、休みましょう』と促すときもありますね。

実際、入院となった場合は患者の子が在籍している学校にも状況を伝え、入院している子どもたちが教育を受けるために設置されている『院内学級』の利用手続きもすすめます。お子さんにとって負担にならなければ、病院から在籍する学校へ登校してもらいます」(以下、こど看さん)

 通学のペースはまちまちで、子どもたちの状況を加味して週1時間、週1日……と、段階的に増やしていくケースもあるそう。実際の医療現場で、不登校児やその保護者と向き合うこど看さんは、各家庭にある切実な事情をじかに聞くこともあるといいます。

「お子さんが自宅で暴力を振るってしまったり、暴言を吐いてしまったり『生活に支障が出ている』という相談を受けるうちに、あわせて、お子さんが不登校になっている現状を聞くことが多いです」

不登校は「問題行動」ではない


 こど看さんは一方で、「不登校は問題行動ではありません」とも強調します。

 文部科学省も、2016年に全国の教育委員会に向けた通知「不登校児童生徒への支援の在り方について」にて、不登校児童生徒を支援する上での基本的な姿勢として下記のように記載しています。

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不登校とは,多様な要因・背景により、結果として不登校状態になっているということであり、その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが、児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要であり、周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり,結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待される。

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 しかし現実には、保護者をはじめ、周囲の大人が深刻に受け止め過ぎているケースが少なくないといいます。

「お子さんの声に耳を傾けると、大人が思うほど、理由は複雑ではない場合もあるんです。私から一言『学校で何に困ってるの?』と聞いたら『進級して勉強についていけなくなった』『行ってもつまらないから家にいる』と、あっけらかんと語ってくれるお子さんもいて、医療側も『学校へ復帰させなければ』と躍起になるのではなく、あくまでもお子さんのペースを一番に考えて、入院中の日常生活をサポートしています」

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