冷凍パン市場は拡大傾向が続いている。業務用市場は、コロナ禍での落ち込みから回復が続いている。特に、人手不足などに対応した商品への支持は依然として厚く、販売は着実に広がっている。一方、市販市場は縮小傾向が見られ、店舗での販売からECでの展開に切り替える企業もある。
矢野経済研究所が調査した2022年度の国内冷凍パン生地と、冷凍パン市場規模は、事業者売上高ベースで、前年度比4.1%増の1,805億6,600万円となった。市場の構成としては、冷凍生地が79・9%を占め、焼成後冷凍パンは20・1%に留まる。
2019年末まではカフェチェーンやレストラン、カラオケなど、ホイロ(発酵機)を持たない施設や店舗で需要は拡大していた。20年のコロナ禍で外食や路面店での販売が大きく落ち込み、市場は急速に縮小した。しかし、23年以降は人流やインバウンド需要の回復、パンを提供する業態における人手不足のさらなる深刻化などを背景に販売はさらに広がっているという。
生産統括本部冷凍生地生産本部冷凍生地生産第二部長の芳野靖弘氏は「量販店のインストアベーカリーや、新たにベーカリーの導入を考えている店舗などは、パートやアルバイトとして勤務されている方が調理する場合が多いため、簡単な工程でパンを提供できる製品の支持は強まっている」と話す。
山崎製パンの冷凍生地の販売は二ケタ近い伸長を見せている。主力商品のクロワッサンに加えて、ホイロを使用せずに焼きあげられる生地や、加工度の高い焼成後冷凍商品などの引き合いは年々増えているようだ。
敷島製パンでは、カフェや飲食業態からの引き合いが伸びたという。特に焼成後冷凍パンは、前年比で約30%増と大きく伸長した。
最近では、業務用製品の販売でもECサイトでの展開に力を注いでいる。ある程度の数量がないと物流会社からの直接輸送が難しいため、これまでは小口の取引は断ることも多かったようだ。ECサイトは少量でも注文を受け付けており、販売は着実に広がっているという。
冷食カンパニー企画管理グループの杉本拓三氏は「簡便性の高い商品は、ユーザー規模を問わず需要が高まっているのを感じる。間口を広げられるネット通販の伸びは非常に勢いがある」と話す。
テーブルマークの冷凍パンの販売は、家庭用が約2割の減少、業務用は1桁後半の減少となった。家庭用はNB品の集約により前年を下回った。業務用は、大手ユーザーが競合他社へ差し替えたことと、こっぺぱんの終売が大きく影響した。
イートアンドグループでは、自社のパン専門店「アールベイカー」でセントラルキッチンを設置して展開を強めている。現在は、好調なクロワッサンを中心に冷凍生地を製造している。今後は、新商品として「揚げどらやき」の展開を進めるほか、次の展開を見すえた商品の開発も進めているという。
〈冷食日報2024年12月20日付〉
配信: 食品産業新聞社ニュースWEB