奈良県警からストーカー規制法に基づく「警告」を受けた中国籍の女性が、前提となるつきまとい等がなかったにもかかわらず警告したことなどは違法だとして、奈良県に対し1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、奈良地裁は12月12日、女性の請求を棄却した。
女性は、大学院生だった当時、同じ研究室に所属していた男性が女性につきまとい等をされたと警察に訴えたことを契機に、2022年6月にストーカー規制法上の警告を受けた。事実無根だとして、今回の国賠訴訟のほか、警告の取消訴訟も提起している。
取消訴訟では、一審・二審ともに取消訴訟の要件である「処分性」がないなどとして“門前払い”となり、警告が違法か否かの判断自体がおこなわれなかった。現在最高裁で審理されている。
女性側は、国賠訴訟で、つきまとい等はなく警告を出せる要件を満たしていないと主張したほか、事情聴取の際に通訳をつけなかったことや、警告は不利益処分だとして聴聞・弁明の機会が与えられなかったことなどは違法であると訴えていた。
女性の代理人を務める松村大介弁護士は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「事実認定及び法解釈を根本から誤った一切許容する余地のない不当判決と考えているので、最高裁でまで徹底的に戦う」とし、次のようにコメントした。
「原告は相手方男性の被害申告の信用性について十分な根拠をもって反論しました。しかし、裁判所は原告の主張に全く向き合わず、判断すらしていません。
本件で奈良県警は原告の夫にも情報漏洩を行っていますが、ストーカー規制法からも許容されない違法性の強い公権力の行使に他ならないものと考えています。
別件取消訴訟の控訴審では大阪高裁は、文書警告が法的効果を有することを正面から認め、警察の主張を否定し、奈良地裁の不当判決を是正しました。ところが、本判決はこの大阪高裁判決を否定する驚きの判断を行った点でも看過できない重大な違法があるものと考えています」
(12月12日16時20分、原告代理人のコメントを追記しました)
配信: 弁護士ドットコム