出たとこ勝負で黒磯駅へ/内田晃「ゆるゆる『歩き旅』のススメ!」

 出たとこ勝負。ビジネスの世界なら準備不足としかられそうだが、旅ではプラス要素になる。見るもの聞くものすべてが新鮮で自分で見つけた達成感もある。

 今回はスマートフォンも封印して、出たとこ勝負の旅を楽しみたい。目的地はJR東北本線黒磯駅(栃木県那須塩原市)。かつては皇室の保養地・那須御用邸の玄関口となり、大いに賑わったが、隣駅の那須塩原駅が新幹線の停車駅になってから、すっかり寂れたと耳にしていた。

 ところが、駅の改札を出て驚いた。駅前は整然と整備されて、左側にはガラス張りの近代的な建物もある。美術館かしら? と訪ねると、なんと市立の図書館ではないか。

 正しくは「那須塩原市図書館みるる」。館内は森をイメージして設計され、ふんだんに木材が使われている。木製の本棚は天井に届き、らせん階段があったり、カフェがあったりと昭和期の図書館とは大違いだ。

 特に2階のアクティブラーニングスペースは斬新で、木床の空間が階段状に続き、学生たちは声を上げながら楽しげに勉強していた。学生時代にこんな図書館があれば、オイラの人生も変わっていたかも。

 駅前でもう一つ目を引いたのが、店頭で温泉まんじゅうを蒸す明治屋だ。バラ売りも可能でさっそく食べてみる。那須産の小豆を使ったこしあんは上品な甘さで何個でも食べられそう。

 次にレジ待ちの間に見つけた“那須野ボッカ”もいただく。フワッとしたスポンジ生地にフレッシュバターが挟んである。その名の通り素朴な味わいである。

 サッポロビールのレトロな看板を見上げつつ路地を入ると石造建築の高木会館が見えた。説明板によると旧黒磯銀行本店として1918年に完成。建材に芦野石や大谷石を使用したことで、140戸が焼失した1931年の大火も逃れた。

 現在はカフェ・ド・グランボワとして利用され、往時の雰囲気とともに食事や喫茶が楽しめる。看板メニューのグランボワライスはバターライスにナス、ひき肉、パプリカのあんかけを乗せたもの。バターライスには刻んだ大葉が混ぜてあり、口に含むと爽やかな香りが広がる。

 食後は黒磯神社を参拝。初老のカメラマンとしばし雑談し、オススメを聞く。

「板室街道(県道55号)沿いに民家をリノベーションしたカフェやショップが並んでいるから行ってみたら」

 ほほう。それは興味深い。出たとこ勝負の旅はもう少し続きそうだ。

内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。

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