日本弁護士連合会(日弁連/渕上玲子会長)は12月19日、「弁護士に対する業務妨害、特に離婚・男女問題に関する事件に係る業務妨害に関する会長声明」を公表した。
声明では、離婚・男女問題の事件の代理人を務める弁護士に対する相手方当事者から「敵対的な感情」が向けられたり、共同親権等に関する法改正について発信している弁護士に対してSNS上での誹謗中傷など「激しい妨害活動」が報告されたりしていると懸念を示した上で、弁護士に対する業務妨害は看過できないとしている。
●業務妨害罪など犯罪に問われる可能性も
声明によると、面会交流に関する事件や、DV・ストーカー事件などを含む離婚・男女問題に関する事件の代理人弁護士に対しては、相手方当事者から「敵対的な感情がそのまま向けられることが多い」という。
2010年には、横浜や秋田で弁護士が殺害される事件があり、加害者はいずれも離婚関係事件の相手方当事者だった。
近年では、共同親権等に関する法改正について情報発信している弁護士に対し、「各地で街宣活動を行い罵声を浴びせたり、SNS上で誹謗中傷したりするなどの激しい妨害活動」が数多く報告されているとした。
声明では、こうした行為について「業務妨害罪」(刑法第233条・第234条)、名誉毀損罪(同法第230条第1項)、脅迫罪(同法第222条)などの犯罪に当たり得るとし、民事上も損害賠償責任を問われると指摘している。
●特に女性弁護士の被害が深刻
声明によると、日弁連の弁護士業務妨害対策委員会が2022年度に実施した「離婚・男女関係事件に係る弁護士業務妨害アンケート調査」の結果、こうした深刻な被害が報告されたという。
調査結果からは、「特に、このような被害は女性弁護士においてより一層深刻であることが確認された。そのこと自体がジェンダー差別の表れともいい得るものであり、このような観点からも到底看過することができない」としている。
こうした弁護士に対する業務妨害は、個別の弁護士の問題ではなく、弁護士や弁護士会、日弁連が一体となって取り組む重要な問題であると指摘。業務妨害をなくさなければ、「相手方当事者からの激しい攻撃が予想される事案などを受任する弁護士が減りかねない」ため、結果的に市民の権利保護を果たせない事態になると懸念を示した。
配信: 弁護士ドットコム