●もしもわが子がアザコンだったら…
それでは、もしもわが子に“アザコン”の兆候が見られたら…。親の正しい対処法や声かけ、今後気を付けるべき点とは?
「子どもはどの子も、親に肯定されたくて日々頑張っているものです。ですから、子どもが親によって肯定されれば、“そのままの自分でいいんだ、自分は存在していいのだ”という安心感が培われます。しかしながら、それが十分でなかった場合、子どもは“ありのままの自分では嫌われるかもしれない、否定されるかもしれない”という不安感が強く出るため、他者を必要以上に気にするようになってしまいます」(森氏 以下同)
だが、的外れな肯定では、逆効果になることもあるという。
「他の子より優れているとか、よい結果を出せたから褒めてあげるというのでは、“条件付きの肯定”しか子どもに与えていないということになります。親は何かをしたから褒めるのではなく、その子の存在そのものを肯定してあげることを意識しましょう」
●親が取るべき正しい姿勢とは?
・子どもの話にじっくり耳を傾ける。
(子どもの話すことに評価や判断はしない。親は聴くことに重点をおく)
・子どもの気持ちを理解しようと努める。
(子どもが感じていることを評価したり判断したりせず、まずはその子の立場に立ってじっくり耳を傾ける)
・何かができてもできなくとも、そのことにとらわれず、よくできたら「頑張ったね」、よくできなかった場合は「大丈夫。誰でも得意なことや苦手なことがあるものよ」と声をかける。
(その子のありのままを受け容れてあげる努力を)
・なるべく子どもの主体性を認める。
(子どもが 「私、算数の勉強が嫌いだから、やりたくない。 それよりも絵を描いてる方が楽しいもん」と言ったら、 「そっか、○○ちゃんは算数が嫌いなんだね。だから嫌いなことをするよりも、好きな絵を描く方が楽しいんだ。その気持ちわかるよ」と受けとめる。その子は親によって自分の気持ちが受けとめられたことに安心する)
「以上のように、親にありのままの自分が受け容れ られたと感じると、子どもは安心し、自ら向上しようという思いが自然に引き出されていく可能性があります」
それでは、子どものアザコンが治らないまま大人になると、どんな弊害が起きるのだろうか。
●大人になって起きる弊害とは?
・自分軸で生きることが難しくなる。
(他者に振り回されたり、他者の言動に影響されやすくなるため、対人関係全般に多くのストレスを抱えることになる)
・自分は自分、他人は他人という心の境界が曖昧になるため、自分の思いや感情、価値観が他者と違っていいということが、受け容れにくくなる。
(例えば、「自分が他者の頼みごとを断ると、その人の気分を害することになる」と思う人であれば、「他者に自分の頼みごとを断られた時“自分なんてどうでもいい人間だと思っているから断れるんだ”」などと極端なとらえ方をしてしまうことが考えられます)
・疲れやすく集中力が低くなりがちで、自己実現が難しくなる。
(日頃から、他者の視線を気にしすぎてエネルギーを消耗しているため、生産的なことに十分なエネルギーを注ぐことができなくなる)
・対人関係全般に緊張があり、常に交感神経が優位の状態になるため、自律神経のバランスが崩れやすくなる。
(いつも体の調子が悪かったり、気分の浮き沈みが激しいなどの症状が、頻繁に見られるようになる)
これらの弊害を見ると、一重にアザコンと言っても、決して軽く見てはならないことがよくわかる。子の将来や幸せに後々影響を及ぼすのだとしたら、親は今からでも、十分子どもを観察し、ありのままのわが子を受けとめる声かけ&姿勢が必要だ。
(取材・文/吉富慶子)