「実の両親や義父母の介護が始まり、ダブルケアを行うようになったら、まずは地域の自治体の支援について情報を収集しましょう。長期間に及ぶことが多いダブルケアを乗り切るためには、有用な情報を集めることが重要です」(植木さん 以下同)
ダブルケアを支えてくれる介護支援サービスなどに加えて、スクールカウンセラーといった育児や介護の悩みを相談できる場を探すことも大切だ。
●介護と育児、自分のなりの優先順位を
ダブルケアがもたらす負担は、それを担うパパやママだけではない。その子どもにも影響がある。ダブルケアラー(ダブルケア当事者)さんが集うコミュニティ「お喋りカフェ」の利用者の中には、次のケースがあったという。
「Aさんの場合、小学生低学年のお子さんがいました。その子の祖母が認知症となり、大きな声を出したり急に怒り出したりするように。その状態に子どもが不安を感じてしまい、情緒不安定な状態になってしまったことがありました」と植木さん。
また、脳いっ血で倒れた実母の身体介護を行ったBさんのお子さんには、介護に多く時間を取られたことで親子の時間が減ってしまい、髪の毛をむしるストレス症状が表れたこともあったとか。
「子どもにストレス症状が見られる場合、カウンセラーや育児相談を利用し、介護や育児のバランスやスケジュールの見直しが必要になります。自分の時間には限りがあるため、自分なりの優先順位を考えるといいと思います」
なお、Bさんは当時の体験を踏まえ、次のように語ってくれた。
「子どもを育てる時期は、限られています。人によって優先順位は違うと思いますが、私個人の感想ではどちらかを優先するなら育児に重心を置くことをおすすめします」(Bさん)
●仕事を続けることが、自分でいられる時間
植木さんによると、ダブルケアを行うと時間のやりくりが難しくなるが、仕事を続ける人は多いという。
「ダブルケアラーさんは、介護や育児などで『○○さんの娘さん』『○○のママ』と呼ばれることが多いです。仕事をすることで社会とつながることができ、自分の時間を作る場にもなります」
ダブルケアをしながら正社員でいることは難しくなるが、時短やパートタイムに変更して仕事を続けていくことができる。
ちなみに、介護休業制度はケアマネージャーさんとプランを相談するための期間として、1週間程しか設けられていないことも多い。いざダブルケアを行うことになっても仕事の継続を望む場合は、勤務先の介護休業制度について詳細を調べておこう。
(ノオト+石水典子)